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“藤井聡太五冠ブーム”の一方で…「リアルでもカジュアルに気軽に指せる場所があればいいな」将棋カフェの願いとは
posted2022/02/13 17:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Satoshi Shigeno
2022年の将棋界も熱い闘いが続いている。
藤井聡太竜王が「王将」のタイトルを獲得し、19歳にして史上最年少の五冠を達成。さらには佳境を迎える順位戦に女流タイトル……と、数々の対局が行われている(Numberの将棋号も出た)。ネット中継をベースに生放送で対局を見られる時代になりつつあるが、“そう言えば見なくなった風景があるな”と感じることがあった。“公園で青空将棋してる人”たちである。
オジさんたち(若い人もいたけど)がお茶やラジオを横に置いてウンウンとうなっている。棋士の方から「将棋は伝統文化でありつつ、大衆の方々に楽しんでいただくものです」という話をよく聞くが、そうやって人々が楽しんできたからこそ、将棋が日本人にとって身近なものとして存在した。
そんな“気軽に楽しめる将棋”が、現代はオンラインやゲーム内で……と変わってきている。実際、自分もそういったアプリをスマホにダウンロードしているし、電車などで移動中に対局している人の姿もチラホラと見る。それ自体うれしいことだけど、将棋盤を前にしてワイワイと楽しんでいる人たちの姿を眺めるのもいいんだよなあ、とぼんやりと思っていた。
壁には棋士の色紙がいっぱい!
そんなスペースになり得る場所が高田馬場にあると聞いた。「COBIN」という名前の将棋カフェで、Number将棋号・若手棋士座談会の撮影場所にもなっている。何となく足を運んでみたいなあと思ってはいたのだが、気になったので早速取材に赴くことにした。
日曜日の昼下がり。到着してみると、その場にいたのはなんと、先崎学九段。そう言えばTwitterを見ると、先崎九段だけでなく、藤井四冠の姉弟子である室田伊緒女流二段が一日店長をやっているなど、棋士の方々がよくいる。だからか壁に戸辺誠七段など、棋士の色紙がいっぱいあるじゃないか。
そう言えばここ、ABEMAトーナメントで佐藤康光九段、谷川浩司九段、森内俊之九段のレジェンドチームも訪れていたよな……と思い出して自分の座っている場所がそこだったことに、軽く震える。
将棋盤が並び、奥にはスポーツバーよろしく対局中継を見られる大型スクリーンもある。本格的に将棋を楽しむ空間なワケだが、ワカナさんという女性店員が礼儀正しく「いい4秒将棋が指せるように、頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします!」とあいさつしてくれた。
あれ、店長さんではなくワカナさんが指すんですか? そう思っていると、先崎九段との対局が始まった。カメラを構えてはみたものの、速くて何が起きているか分からない……。1手4秒という早指しルールで指しているようだ。