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大坂なおみ、6年ぶりの世界ランク90位前後へ…「ランキングは気にしない」記者が見た“涙の全米オープンとは全く違う”ある変化とは?
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![山口奈緒美](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Manno
posted2022/01/23 17:55
![大坂なおみ、6年ぶりの世界ランク90位前後へ…「ランキングは気にしない」記者が見た“涙の全米オープンとは全く違う”ある変化とは? <Number Web> photograph by Hiromasa Manno](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/9/6/700/img_962b770b4a2d610b0ae65f6b7948f8c1307586.jpg)
GS復帰戦となった全豪オープン。ディフェンディング・チャンピオンとして連覇を狙ったが、惜しくも3回戦で敗れた
「これは私にとってはうれしいことでもあるの。負けたことがじゃなくて、誰に負けたかってことを考えるとね。だって、女子テニスが成長している証だから。私が負ければニュースの見出しになるけれど、そのとき別のスーパースターが育っているという点でテニス全体にとってはいいことだと思う」
本来の大坂なのかもしれないが、昨年の言動を振り返れば、いくらなんでも変わりすぎ、感じ良すぎではないか。しかしこれが年明けからの大坂の姿だった。
大坂を破ったのは“シャラポワ2世”と謳われた元天才少女
前哨戦は準決勝まで勝ち上がったところで疲労を理由に棄権したが、今大会は1回戦、2回戦とセットを落とさず無難に勝利。3回戦に迎えたアニシモワは危険な相手だった。
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17歳のときに全仏オープンでベスト4入りし、「アメリカ生まれのアンナ・クルニコワ」とか「マリア・シャラポワ2世」などと謳われ、次世代ホープの筆頭と目されていた。翌年には自己最高の21位をマークしたが、3年近くもグランドスラムで3回戦を突破できなかった背景には、コーチでもあった父の突然の死があった。
そんな元天才少女が今年は開幕戦で約3年ぶりのツアー優勝を果たし、今大会は2回戦で東京五輪金メダリストのベリンダ・ベンチッチを破って勝ち上がってきた。若くして人生の大きな山を越えてきた20歳が、いよいよ本物へと向かおうというシーズン。初対戦となる大坂は試金石にうってつけだったに違いない。
その気負いのせいか、立ち上がりのアニシモワは固く、大坂は2つのダブルフォルトをもらってまずブレークに成功。第6ゲームでブレークバックのピンチもあったが、最初のリードを守り切るかたちで第1セットを先取した。しかし第2セット、アニシモワの武器でもある鋭いリターンが大坂を襲う。第2ゲームは3度のブレークポイントを握られながら3回のデュースの末になんとかしのいでキープしたが、第4ゲームでついにブレークを許した。
アニシモワのスピードのあるショットは試合が進むにつれてその精度も高まり、あとで大坂は「明らかにラリーは彼女のほうが多く支配していた。あまり経験のない感覚だった」と脱帽した。ウィナーを奪い合うスピーディでパワフルなテニスは、スタンドの観客も、テレビの前のファンも釘付けにし、 最終セットは互いにサービスゲームを守ったままタイブレークに突入。第10ゲームのアニシモワのサービスゲームで2度マッチポイントを握った大坂だが、一歩も引かないアニシモワからあと1ポイントをもぎ取ることができなかった。
全豪オープンの最終セットは6-6で10ポイント・タイブレークによって決着する。絶体絶命のピンチを切り抜けたアニシモワの攻めの手は強まり、大坂は1ポイント目でミニブレークを許してから終始劣勢を強いられたままマッチポイントを迎えた。最後はアニシモワのサービスエースだった。