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大坂なおみ、6年ぶりの世界ランク90位前後へ…「ランキングは気にしない」記者が見た“涙の全米オープンとは全く違う”ある変化とは?  

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiromasa Manno

posted2022/01/23 17:55

大坂なおみ、6年ぶりの世界ランク90位前後へ…「ランキングは気にしない」記者が見た“涙の全米オープンとは全く違う”ある変化とは? <Number Web> photograph by Hiromasa Manno

GS復帰戦となった全豪オープン。ディフェンディング・チャンピオンとして連覇を狙ったが、惜しくも3回戦で敗れた

 試合後、アニシモワは大坂のことを「自分に正直な人で、おもしろいし、かわいらしい人」だと表現し、こう続けた。

「去年は自分のメンタルヘルスの問題を打ち明けて、大変な時期を過ごしてきたと思う。今回はディフェンディング・チャンピオンという立場で余計に難しかっただろうし。それはわかるような気がするわ」

 口にしたのは共感や同情に似た思いだった。この試合、大坂の21本のウィナーに対してアニシモワが46本と圧倒したが、その強気な攻撃的姿勢は皮肉なことに去年の大坂の正直な告白と無関係とは思えない。つまり、相手は大坂の内面に付け入るところがあることを知っている。

 すべての選手がそういう意識で向かってくるだろう。大変だ。それを跳ね返すだけの心身の強さがこれからの大坂には間違いなく必要になる。試合を離れている間に取り戻したピュアなメンタリティーには、その力があるだろうか。

「ランキングは気にしないようにする」

 ここから先は、自分の立ち位置の変化にもうまく対応しなくてはいけない。昨年の優勝ポイント2000のうちの大半を失って90位前後まで急落する見込みだ。昨シーズンは全米オープンのあと1試合もプレーしなかったが、その間ランキングは3位から13位に落としただけだった。70位以下はもう5年以上経験したことのない場所だが、その覚悟は———。

「ランキングは気にしないようにする。年間を通してこういうプレーができれば、ランキングは相応のところに上がっていくはずだから。グランドスラムで私にシードがつかなくて困るのは、私よりも対戦する相手のほうだと思う。私はひたすらがんばるだけ」

 本音を言えば、60位に負けて力を出し切ったなどと満足しない大坂を見たい。グランドスラムの3回戦での善戦を褒めるなど、大坂への正当な評価であるはずがない。前へ進むために必要な今のプロセスを終えたその先を、心のどこかでもう待っている。

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