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大坂なおみ、6年ぶりの世界ランク90位前後へ…「ランキングは気にしない」記者が見た“涙の全米オープンとは全く違う”ある変化とは?
posted2022/01/23 17:55
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Manno
こんなに気持ちのいい敗者となった大坂なおみを見たのはいつ以来だろう。ひょっとしたらこんなことは過去になかったかもしれないと感じるくらいだ。手に汗握る2時間15分の試合の中でただの一度も感情を乱すことなく、20歳の溌溂とした挑戦を受け止め、堂々と振る舞い、そして敗れた。
「かなりハイレベルな試合だった。自分を責めるところは一つもない。自分の中ではベストを尽くしたと思う」
勝ち負けよりも、こう言えることが今年一番の目標なのだという。ディフェンディング・チャンピオンとして臨んだ全豪オープンの3回戦で望みが砕かれても、穏やかな表情で会見に臨んでいた。
昨年10月に24歳になった元女王は、あらためて今季目指す自分の姿についてこう語った。
「今年は一年を通してプレーし、今までで最高の姿勢を見せるつもりでシーズンに入った。どのポイントも全力で戦い、負けても勝ってもコートを出るときにはやりきったと思えるようにしたい。見た人たちに『もっとやれたのに』なんて言わせないくらい、必死で戦うところを見せたいの。そういう気持ちをキープすれば、勝ちも増えていくはず」
昨年世間を驚かせた〈うつ症状〉の告白と、メディアに対する問題提起については、「長く溜め込んでいたものが弾けてしまったような感じ」だったと表現し、まだ複雑な不安は払拭しきれていない。さまざまなところに派生した齟齬や不信感は、簡単には解消されないだろう。しかし、「去年のような状態ではない。今年はもう少し気楽にいけそう」とポジティブな姿勢を見せ、「会見ではもう二度と泣かない」とも言い切った。
19歳に負けて泣いた全米オープンとは明らかに違った
昨年の全米オープンでもディフェンディング・チャンピオンだった大坂は、同じ3回戦で世界ランク73位の当時18歳レイラ・フェルナンデスに敗れたあと、「しばらくテニスから離れようと思う」と涙を流した。今回敗れた相手、アマンダ・アニシモワは世界ランク60位の20歳だ。実によく似たシチュエーションだが、敗戦後の態度の変化は明らかだった。