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30打席ノーヒット…“一軍の壁”にもがき苦しんだ1年で、DeNAのスター候補生・森敬斗19歳が見た光明とは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PHOTO
posted2022/01/10 11:01
昨年7月11日の中日戦でプロ初スタメンを勝ち取り、今後のチームを背負う大器として今季はレギュラー獲りを狙う
坪井智哉コーチからは「タイミングを取るとき、どうしても体が開いてしまい、バットが遅れて出てきてしまう。だからタイミングを取るとき体を真っすぐにしておかなければいけない」と指導を受け、嶋村一輝コーチからは「トップが決まると焦って動いてしまうので、そこを意識しつつタイミングをゆっくりと取ること」と、森の悪い癖に言及しアドバイスを送った。
森は自己分析し、次のように語る。
「どうしても焦ってしまい、ゆっくりタイミングを取ることができませんでした。先にボールに入られてしまって、早く体を開かないとバットが遅れてしまう。けど結局体が開いてしまっているからバットが出てこない。完全な悪循環でした……」
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とにかく空いている時間はバットを振り自分の体と心に向き合った。なにをすれば良くなるのかというよりも、なにをしたらいけないのか。あるいは崩れてしまったらどうすればいいのか。自問自答しつつ、地道に体に落とし込んでいく作業。その甲斐もあって森はシーズン終盤になると、ようやく当たりを取り戻すようになった。
「大変でしたけど、自分が悪いときになにをすればいいのか学べましたし、ときにはノートに書き留めるなど、すごく引き出しが増えたと実感しています」
一軍でしか得られない経験と成長
一軍の選手たるもの、チームに帯同されつつゲームに集中しながら修正をしなければいけない。ファームでは決して学ぶことのできないプロとしての取り組みがあった。
それは守備でも同様だ。俊敏な動きと爆発的な肩の強さばかりがクローズアップされるが、昨季は失策6。数字に表れないミスも決して少なくはなかった。ファンブルもあれば、ランニングスローの不安定さも見られ、守備においてもどこか焦りが感じられた。
「守備に入るたび消極的になっていってしまった部分もあり、当たり前のことを当たり前にやる大切さをすごく感じました。ゴロに対してパッとステップして送球すればいいものを、背伸びをしてランニングスローをしてしまったり……。決してランニングスローは悪いことではないのですが、確実性を考えれば普通にステップをして送球した方がいい。例えば打球にもよりますが、9回裏のピンチの場面でランニングスローをするのかといえば、その選択はないと思うんです。本当、ワンプレーの重みを昨シーズンは感じることができ、勉強になりました」
課題は多いと森は言うが、そんなときアドバイスをくれたのが大和ら先輩たちだった。