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現地女性10人全員が「かわいい!」と回答…なぜ男子バレー代表・高橋藍(20)は異国の地・タイで大人気なのか?
text by
高田胤臣Taneomi Takeda
photograph byTakahisa Hirano
posted2022/01/08 17:02
21世紀生まれ初の男子代表に選ばれた高橋藍。その甘いルックスと優れた才能から日本国内でも女性を中心に注目されている
『ハイキュー!!』は古舘春一原作の高校バレーボールを題材にしたマンガだ。アニメ化もされ、タイにもタイ語翻訳のマンガ、アニメが上陸している。タイでは『ハイキュー!! クートップファープラターン』という副題つきのタイトルで知られる。ちなみに、この副題には「天国に打ち込むコンビ」といった意味がある。
アニメ版のタイ国内放映は2015年2月からで、2018年8月からはパート2も放映されていた。タイの雑誌編集者に訊いてみると、小学生にはかなり人気のあるアニメなのだという。近年日本のエンタメは韓国に押され気味だが、アニメだけは日本のものが今でも人気がある。
ここ数年はタイでコスプレ・イベントなどが流行っているものの、参加者はせいぜい20代半ば。日本のようにアニメやマンガ愛好家が生涯現役で楽しむということはなく、多くが就職して自立するとアニメから離れる傾向がタイにはある。そのため、『ハイキュー!!』は大人にはあまり知られておらず、高橋藍人気がこのアニメと繋がっているとは考えにくい。
高橋選手への注目度はタイ人の純粋なバレー好きから始まっていると考えられる。というのは、タイ人の熱狂的なバレーボールファンのみならず、愛国心の強い人はなによりタイ代表女子バレーに注目するからだ。
タイの高橋藍人気の背景にあるのは「女子代表の強化」?
タイ代表チームは1964年に国際バレーボール連盟に加盟しているものの、女子代表チームが力をつけてきたのは2000年代初頭。2001年のアジア選手権を皮切りに、数々の大会で好成績を残している。タイでも日本代表が強いことは知られており、そんな強豪をタイ代表女子が何度も破ってきた。とはいえ、わりと好成績を残すのに、オリンピック出場にはあと一歩のところで及ばない。日本のサッカー代表も力をつけてきたとはいえ、世界の壁はまだ高い。このあたり女子バレーのタイ代表も似ているので、日本人にもいかにタイ人が女子バレーに興味を持ち、かつ応援に熱が入るかがわかるだろう。
そうしてバレーボールファンの数がさらに増え、その一部が高橋藍選手をテレビで見つけ、虜になってしまうのもうなずける。
タイにおける「推し文化」の特異性
そして、高橋選手人気のひとつの事情として、タイにおける「推し文化」は基本的には女性が動かしているという点を把握しておくべきだ。近年は日本のアイドルグループ『AKB48』のバンコク姉妹グループが誕生したことで男性の推し文化も浸透してはいるが、例えば、日本のメイド喫茶が進出した当時もその客層は日本とは大きく異なり、大半が女性客だったほど。タイにおいて、「推し文化」を追求するのはあくまでも女性だった。
それに加えて、タイ人女性にとって「バレーボール」はとても身近なスポーツであることも示しておきたい。それは、中学高校の女子体育の授業の球技で選ばれることが多いことも由来している。代表チームのうちの女子が強いという点も、より同性ファンが増える要因にもなる。