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「次元が違いました」と敵将もお手上げ。青山学院大学の圧勝を生んだ「美しいフォーム」とは?〈第98回箱根駅伝〉 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/01/07 11:00

「次元が違いました」と敵将もお手上げ。青山学院大学の圧勝を生んだ「美しいフォーム」とは?〈第98回箱根駅伝〉<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

青学大・近藤幸太郎はエースがひしめく2区で区間7位と好走。「美しいフォーム」の筆頭格だ

「初めて迷うことなく2区を決めた」

 他大学と比較すると、青学大の安定感がより際立つ。

 順大は1区で区間18位と出遅れ、2区に配置したオリンピアンの三浦龍司(2年)を良い位置で走らせることができなかった。ライバルの駒澤大学もまた、3区で区間16位、首位から5位に順位を大きく落とし、2区でエースの田澤廉(3年)が区間賞の走りで稼いだリードを生かせなかった。今回、出場した10人全員が区間一桁順位で走ったのは青学大だけである。

 さらにいえば、区間配置の妙もあった。ルーキー2人の大胆な起用は一か八かではない。原監督は選手選考の際に「選手の能力値と練習消化率、直前の体の状態、そしてコースとの相性や適性を重視する」と話す。今回エントリーされた16名は誰が走っても区間3番以内で走れる状態だったが、より可能性の高い選手を学年関係なく選んだということだ。

 監督にとっては早々に2区のエース候補が見つかったことも大きかっただろう。前回は2区に起用した中村唯翔(現3年)が区間14位と奮わず、悪い流れを引きずってしまった。今回は「初めて迷うことなく2区を決めた」と言うように、自信を持って近藤幸太郎(3年)に託した。近藤は今季、5000mと10000mで自己ベストを更新し、青学大の両種目の記録保持者に。彼もまた、青山メソッドの中で3年間ケガなく成長してきた選手である。

 青学大の選手はみな美しいフォームで走るが、近藤はその筆頭格といえるだろう。腰高の姿勢で歩幅が広く、足がスッと前に出る。集団の中で見ると姿勢の良さは際立っていて、昨年の関東インカレで近藤選手の走りを見たときは、思わずレース後に「めちゃくちゃきれいなフォームだね」と声をかけたほどだった。

効果てきめんだったコアトレーニング

 どのようにしてフォームを磨いてきたのか。近藤はこう話す。

「高校時代は腹筋や背筋とか、そういった練習がベースになっていたんですけど、青学大では科学的根拠に基づいて練習メニューを教えてくれます。それを実践していくことで、きれいなフォームが磨かれていると思います」

 原監督がトレーナーの中野ジェームズ修一氏から学んだコアトレーニングは、青学大の代名詞だ。体幹をしっかり鍛え上げることで、ブレない走りの土台を作る。加えて昨季からはアウタートレーニングを積極的に取り入れ、内と外から肉体を強化してきた。選手は厚底シューズを履くようになってから下肢よりも臀部周りのケガが増えており、ケガ防止を兼ねた強化策であったが、今回の結果を見るに、その効果はてきめんだったと言えるだろう。

 2区の近藤が区間7位の走りでチーム順位を5位から2位に引き上げると、3区の太田が区間2位の走りで首位を奪い、そこからは一度も首位の座を譲ることなく、快晴の箱根路をフレッシュグリーンのたすきをまとった選手たちがすいすいと駆け抜けた。復路の9区、10区の走りはまさに圧巻で、無難にたすきをつないでも十分総合優勝に届くという状況下で、中村と中倉は敢えて攻めきる覚悟を示した。

 この2区間で青学大は連続区間新記録を打ち立てたが、他大学の指導者に与えたインパクトは大きかったようだ。

【次ページ】 東国大・大志田監督「うちはまだ昔の駅伝」

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