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「こんなセッターはなかなかいない」清風・前田凌吾は春高バレーの主役になる? 才能を磨いた環境と、敵将が恐れる“目” 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT

posted2022/01/04 06:01

「こんなセッターはなかなかいない」清風・前田凌吾は春高バレーの主役になる? 才能を磨いた環境と、敵将が恐れる“目”<Number Web> photograph by MATSUO.K/AFLO SPORT

大会No.1セッターと評価される清風・前田凌吾。3度目の春高バレーで日本一を目指す(写真は昨年度大会)

 セッターがトスを上げ、さまざまなポジションから攻撃に入るコンビ練習でも1本1本のトスは正確で、その都度コミュニケーションをとり「数センチ」どころか、時には「数ミリ」の世界をも追及する。実際、再び同じ選手へ上げたトスが少し高く上げていたことは、スパイカーがヒットする打点をすぐ見ればわかった。

 実戦形式のゲーム練習ではパスの返球がずれたり、ラリー中にコートの外や後方からトスを上げる際も安易にアンダーハンドへ逃げるのではなく、素早くボールの下に入ってオーバーハンドでしっかり飛ばしている。

 また、技術はさることながら、セッターとして周囲を動かす力も持っていることも見逃せない。

 たとえばコート片面で行う3人レシーブの時もそう。山口監督が放つ緩急をつけたボールに対し、簡単にアンダーハンドでさばこうとする選手に対しては「オーバー(ハンド)で上げろよ!」と即座に声を出す。前田自身はと言うと、回転のかかった難しい返球ボールであってもオーバーバーハンドでポン、と飛ばす。同じシチュエーションならおそらくドリブルするか、それを怖がりアンダーハンドで無難に上げようとする選手が多い中、難しいプレーも簡単そうにやってのけ、なおかつ指示も的確で躊躇がない。

 なぜできるのか。至ってシンプルな質問を投げかけると、前田が笑った。

「正直なところ、感覚なんです(笑)。たとえボールが高く上がっても、回転していても、どう入ればいいか、自分がボールに入り込むイメージがあって。それが少しずれるとドリブルしちゃうこともあるんですけど、基本的にはその感覚があるから、どの位置からどこ(の攻撃)を使うのも怖くない。そこはほんまに自分の強みだと思っています」

「勝手なセッターだった」

 バレーボールを始めたのは小学1年生の頃。母の影響で幼い頃からバレーボールに触れ、姉が所属するクラブで競技人生が始まった。女子チームに男子選手は前田1人だったが、幼い頃からボールを扱うことに慣れていた成果はその後もいかんなく発揮され、中学ではパナソニックパンサーズの下部組織であるパンサーズジュニアに在籍。全日本中学選抜にもセッターとして選出され、清風高入学後も1年時からレギュラーセッターに抜擢された。

 当時から技術は巧みで、目を引くうまいセッターであったのは間違いない。だが前田はかつての自分を「勝手なセッターだった」と冷静に分析する。

「1年生の時は好き勝手にトスを上げさせてもらっていただけで、アタッカーを活かすこと、自分自身のコントロールも全然できていなかったんです。山口先生からは『お前の出来でチームが決まる。お前がコントロールできないうちは勝てない』と言われ続けました」

【次ページ】 緩みと甘さを見逃さなかった山口監督

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