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男子は採点ミスで“織田→高橋”優勝者変更、女子は“誰が行くべきか論争”…16年前の「大混乱の全日本フィギュア」で何が起こったか
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/12/22 17:01
16年前の全日本フィギュア選手権。多くの観客が帰ったところで発表されたのは前代未聞の「優勝者の訂正アナウンス」だった
当初はこれが2回転であるとされたが、のちに3回転(に挑んでの回転不足)と訂正された。ここでフリーのルール、「3回転以上のジャンプを2度跳んでよいのは2種類まで」という規定がかかわることになった。織田は3回転トウループと3回転ルッツをそれぞれ2度跳んでいたが、ループが3回転となったことでループも2度跳んだことになった。そのため、これらのうちいちばん最後の3回転ルッツの得点が無効となり、順位が入れ替わったのである。
選考基準におけるポイントからすると、1位でも2位でも高橋が実はトップであった。ただ、訂正後の両者の姿を見れば、あまりにも酷で、苦い後味だけを残した。
女子は「誰がトリノ五輪に行くのか」騒動が勃発
女子もまた、尾を引く試合となった。
代表枠が3の女子は大会の前から、広く注目を集めていた。特に浅田真央の存在だ。このシーズン、グランプリファイナル優勝をはじめ華々しい活躍をする浅田だったが、年齢に関する規定によりオリンピックの出場資格はなかった。だが「特例で出場を」と訴える人々が現れ、一般紙の社説でも、年齢制限への疑問や浅田のいないオリンピックは真の世界一ではないなどとする主張が掲げられた。ついにはときの小泉純一郎首相が出場を後押しするコメントを出すまでになった。騒動と言ってもよい中、迎えたのが全日本選手権だった。
結果、優勝したのは村主章枝であった。2位に浅田、3位に荒川静香、4位が恩田美栄、5位には中野友加里、6位に安藤美姫と続いた。試合を終えて発表された五輪代表は安藤、村主、荒川。ポイントで上位の3人がそのまま代表に選ばれた。
基準通りの選考も「安藤よりも中野がよいのでは?」
基準から逸脱のない選考だった。
ただ、安藤がグランプリファイナルで4位、全日本選手権でも6位と結果も内容も芳しくなかったこと、安藤自身もフリーを終えた直後、「私が選ばれることはないと思うので」と語ったこともあって、「安藤は(代表入りは)厳しい」という空気も一部に漂っていた。