オリンピックへの道BACK NUMBER
男子は採点ミスで“織田→高橋”優勝者変更、女子は“誰が行くべきか論争”…16年前の「大混乱の全日本フィギュア」で何が起こったか
posted2021/12/22 17:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
オリンピックの選考会だったからこそ、過剰なほどの論議を呼び起こした。
そう思わせる大会が、2005年に行なわれたフィギュアスケートの全日本選手権だ。トリノ五輪の代表を懸けた選考対象の最後の大会だった。
男女それぞれに、混乱が生まれた。
このときの選考基準は、2004-2005シーズンの「持ち点」(その選手の国際競技会での最高成績のポイントの70%)に、2005-2006シーズンの国際大会の成績上位2大会と全日本選手権のあわせて3大会の成績をポイント化したものを加えたものとしていた。また最終的にポイント差が10%以内であればポイントの順位を逆転して選考する可能性なども添えられていた。
この選考のもと、わずか1の代表枠を競った男子の混乱は、採点ミスによるものだった。
笑顔の表彰式のあと、まさかの「優勝者が変更」
試合を終えて優勝したのは織田信成。表彰式では晴れやかな笑みを浮かべ、2位の高橋大輔との撮影にも臨んだ。
そのあと、思いがけない発表があった。採点ミスにより織田と高橋の順位が入れ替わる、つまり高橋の優勝が告げられたのだ。
表彰式のあと、会場から引き揚げようとしていた高橋は再び衣装に着替え、織田は涙を流してメダルなどを返し、宿舎へ引き上げた。観客のほとんどは帰路にあったが、わずかに数十名ほど観客席に残る人々の前で、表彰式をやり直すために1人、高橋はリンクにいた。その表情は沈んでいた。
なぜ前代未聞の「採点ミス」は起きたのか?
ミスの理由は、織田の最初のコンビネーションジャンプ、トリプルアクセル-3回転トウループ-3回転ループの最後、3回転ループにあった。