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1000万DL超『ウマ娘』が描くウオッカvsスカーレットのライバル物語…“幻のエリザベス女王杯”に隠された「グッとくる」言葉とは?
text by
屋城敦Atsushi Yashiro
photograph by©Cygames, Inc.
posted2021/11/12 11:00
(左)レースに勝ち、麦茶を仰ぐウオッカ、(右)レースに勝ち、得意気なダイワスカーレット
ウマ娘では「同室、同学年のライバル」
また、ゲーム版では史実では実現しなかった“ファンが観たかった展開”の数々を、史実を検証、尊重しつつ実装しており、それらへの評価がリリース約半年での1000万ダウンロードという空前の数字に繋がっているのだと思われる。そして“幻のエリザベス女王杯”もプレイヤー(トレーナー)の選択次第で実現させられるのである。
ゲーム版『ウマ娘』のメインとなる“育成”モードでは、キャラクターごとに独立したストーリーが描かれていく。ウオッカ、ダイワスカーレットにもそれぞれのストーリーが用意されており、史実で出走したレースをなぞるような形で進む。
その中でフォーカスされているのは、もちろんふたりの“ライバル関係”だ。デビュー前から火花を散らす、同室、同学年のライバル。何でも張り合う子どものようなところを見せつつも、ストーリーが進むにつれてふたりのレースに対する真摯な姿勢が垣間見えてきて、プレイヤーをハッとさせてくれるようになる。特にシニア級(古馬)になると顕著である。こういった成長を感じられる構成は、競馬を題材とした作品ならではだろう。
おもしろいのは、海外挑戦などつねにブレない目標を掲げ邁進するウオッカを、ダイワスカーレットの先を行く存在として描いているところだ。
実は史実では、ダイワスカーレットを管理する松田国英調教師(当時)はウオッカの角居勝彦調教師(当時)の師であり、また直接対決の内容でもダイワスカーレットの方が安定しており、むしろウオッカ陣営こそ挑戦者と言える立場だった。しかしファンからの支持は劇的なレースをするウオッカの方が上だった(直接対決では全てウオッカが単勝人気で上回る)し、何と言っても“牝馬によるダービー制覇”のインパクトは絶大。そういった“ファン目線”での関係性がゲームには反映されているのかもしれない。