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「藤井さんと同じ経験値は羽生さんくらい」「大谷選手と少し共通する」 谷川浩司が語った《2カ月で25対局》伝説と“19歳の藤井聡太”観

posted2021/10/23 06:01

 
「藤井さんと同じ経験値は羽生さんくらい」「大谷選手と少し共通する」 谷川浩司が語った《2カ月で25対局》伝説と“19歳の藤井聡太”観<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa/Kyodo News/Nanae Suzuki

藤井聡太三冠の持つスター性。それは羽生善治、大谷翔平と似たものがあるのかもしれない

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谷川浩司+大川慎太郎

谷川浩司+大川慎太郎Koji Tanigawa + Shintaro Ohkawa

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Tadashi Shirasawa/Kyodo News/Nanae Suzuki

豊島将之竜王と藤井聡太三冠のタイトル戦が続くなど、活況を呈している将棋界。その中で『藤井聡太論 将棋の未来』を出版したタイトル通算27期の谷川浩司九段と将棋ライターの大川慎太郎氏が幅広く語り合うオンライントークイベントが6月に開催された。その一部を抜粋してお届けする(全2回)

大川 豊島竜王と藤井三冠のおふたりはスケジュール的に、なかなか大変な日程になっていますが、若さという部分でその辺りはどうお考えでしょうか。谷川先生も凄まじい過密スケジュールを経験されていますが。

谷川 藤井さんの場合――デビュー当時から学校と両立してという厳しさはあったと思いますけれども。2020年からは2日制のタイトル戦など、1日だけじゃ済まない。また、タイトル戦に関して言えば、3つ重なるということは今まで例がなかったかもしれませんね。

 私の場合、(最も対局数が多かった時は)20代後半でした。約30年前になりますが、当時とは将棋界自体が随分変わってしまいました。だからこそ事前の準備が本当に必要になりました。昔は準備といっても例えば「明日は矢倉の流れにしよう」くらいです。

大川 なるほど。おおまかな枠組みですね。

年末~大晦日まで対局した谷川九段の伝説

谷川 はい。矢倉の森下システム、角換わり腰掛け銀を目指そうと決めて、対局に臨んでいる感じでした。当時から序盤の体系化はある程度進んではいましたけど、そこまで厳しくはなかったですね。そこから比べると、今は将棋の内容によっては中盤の終わりぐらいまで準備して臨まないといけないこともあります。

 ちなみに私がやっぱり一番忙しかった時は……自慢話に聞こえてしまいそうですが、2カ月で25局指したことがあるんです。

大川 それはちょっと信じられない数字です。

谷川 1991年の11月、12月のことでした。竜王戦と、当時は棋聖戦が年に2回あったのでそれだけの対局数になりました。ですから対局日が30日ほどあるんですね。

大川 竜王戦は2日制ですからね。

谷川 そうですね。2カ月間で61日のうち、約30日が対局日。タイトル戦はすべて遠征なので当然、移動日もあります。そうすると40日以上が対局関連ということになる。研究する時間はあまりなかったんですね。

大川 大晦日まで対局をしたのはその時ですよね。確か中原先生との王将戦プレーオフだったと思うんですが。

谷川 そうですね。当時のことはよく覚えています。12月24日が箱根で棋聖戦第2局がありました。そして26、27日に天童で竜王戦第7局、そして29日が王将戦プレーオフの1回戦、最後に31日に王将戦でした。

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