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「W杯優勝は不可能ではない」トルシエが認めた日本サッカーの可能性と、「FIFAランク1位は不可能だ」の理由
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/10/02 11:02
日本代表監督として日韓ワールド杯を含む4年間指揮を執ったトルシエ。国際Aマッチの通算成績は23勝12敗15分だった
――ヨーロッパ全体では、1部リーグに限っても60〜70人はいると思います。
「この20年間にひとりから60人に増えたわけだ。ならばこれからの30年間では60人から150人に増えていくだろう。では60人いる海外組のなかで、フランスやドイツ、イングランドなど5大リーグの1部でプレーする選手はどのぐらいなのか。たぶん20~30人ではないのか」
――いえ、そのレベルとなると恐らく10人ちょっとです。
「ではその十数人のうちで、ヨーロッパカップを獲得できるビッグクラブでプレーするのは何人なのか」
――この夏に冨安健洋がアーセナルに移籍し、南野拓実がリバプールに戻ってきました。他は誰もビッグクラブではプレーしていません。
「計算していくとそうなる。60人が海外でプレーし、そのうちの十数人が1部のクラブに在籍している。だがその中でリーグタイトルや欧州カップを獲得できるトップクラブでプレーするのはふたりだけだ。
重要なのはビッグクラブでプレーすること
これからの30年で、ヨーロッパでプレーする選手が150人に増えれば、半分が1部リーグのクラブに所属し、ビッグクラブでプレーする選手も10人から15人、20人に増えるだろう。30年のうちにこの比率になることは十分に可能だ。
そこに到達するための問題は、日本だけのものではない。先にも述べた通り、受け入れる側の国が、日本人がセネガル人やカメルーン人、コートジボワール人よりも優れていると認識しなければならないからだ。ヨーロッパ人が日本人に目を向け、心を開く必要がある。それには時間がかかるが、30年のうちには認識を改める機会が訪れるだろう。
繰り返すが私にとって日本がW杯に優勝できるかどうかは、世界が日本への認識と評価を改めることにかかっている。今日ではそれはまだ完全には達成されていない。
これで十分か?」
――メルシー、フィリップ。