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「W杯優勝は不可能ではない」トルシエが認めた日本サッカーの可能性と、「FIFAランク1位は不可能だ」の理由
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/10/02 11:02
日本代表監督として日韓ワールド杯を含む4年間指揮を執ったトルシエ。国際Aマッチの通算成績は23勝12敗15分だった
――日本協会が掲げている目標は、2050年までに日本がW杯で優勝することですがどう思いますか?
「W杯に優勝する国は……、まず言いたいのは私にとって日本の最高の結果は、アジアNo.1になることであり、No.1であり続けることだ。最高の結果とは安定と継続性であるからだ。
今日の日本は、アジアNo.1かNo.2だ。海外でプレーする選手を継続的に生み出している。アジアカップに関しては、常にアジアのトップ4に数えられている。W杯にも五輪にも連続出場している。私が思うに、それは日本が世界のトップ10やトップ5に入る可能性を示していることに他ならない。世代を経るにつれて、また4年ごとの世代のクオリティを鑑みれば、現実的に日本はトップ10とトップ30の間にいるといえる。
W杯優勝とFIFAランク1位の可能性
それでは今、日本がW杯に優勝できるかどうかは……、不可能ではないと私は言いたい。というのもW杯はカップ戦であるからだ。つまり抽選で対戦相手が決まり、決勝までの道のりも明らかになる。一発勝負では様々なことが起こり得る。それがノックアウト形式のカップ戦の試合であるからだ。
世界のトップ10に入る国がW杯に優勝しうるかという質問をされれば、私はウィと答える。トップ10とはアルゼンチンやブラジルであり、ベルギーやフランス、イタリア、イングランドなどだ。日本も理論的には……、もしも質問が日本はFIFAランキングで1位になれるかであれば、私の答えはノンだ。それは不可能だ。だがW杯に優勝できるかという質問ならばウィと答える。2050年までには十分に可能だ。どうしてできないと言える。FIFAランキング1位のチームがW杯に優勝するわけではない」
――2050年まではおよそ30年あります。30年という時間は、あなたが先ほど指摘した経験不足を補い、成熟していくことが可能な時間といえるでしょうか?
「こう考えればいい。私が日本にやって来た20年前は、ヨーロッパでプレーする選手は中田英寿ひとりしかいなかった。彼の後に小野伸二や中村俊輔、稲本潤一たちが続いたが、その前はひとりだった。今はどのぐらいいるのか」