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「RIZINの中心は朝倉兄弟」朝倉海が語った“チームとしてのプライド” ボンサイ柔術との思わぬ苦戦で得た手応えとは?
posted2021/09/22 17:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
格闘技は個人競技だが、試合は“団体戦”でもある。決して1人で闘うわけではないのだ。
選手にはコーチがいる。複数の場合も多い。セコンドにつくメインの指導者だけでなくボクシングの出稽古に行き柔術コーチをつけフィジカルトレーナーのもとで肉体や神経系を磨き上げる。「この人の巻くバンデージでなければ」ということもある。近い階級の選手がジムにたくさんいれば、スパーリング・パートナーに恵まれることになる。他ジムの選手にスパーリングを依頼することも。試合中、窮地に陥ってもセコンドの一言で蘇生できる場合だってある。そうした要素を総合しての“個人競技”なのだ。
9月19日に開催された『RIZIN.30』さいたまスーパーアリーナ大会のメインイベントは、まさに“チーム対抗戦”だった。バンタム級ジャパンGPの2回戦、朝倉海vsアラン“ヒロ”ヤマニハだ。
朝倉は兄の未来とともに活躍する前バンタム級王者。現在の日本で最も有名なファイターの1人だ。昨年大晦日、堀口恭司とのリマッチに敗れてベルトを失い、あらためて実力を証明すべくトーナメントにエントリーした。
対するヤマニハは日系のブラジリアン。静岡のボンサイ柔術に所属する。ボンサイ柔術はいま最もホットな格闘技ジムと言っていいだろう。6月の東京ドーム大会ではホベルト・サトシ・ソウザがライト級タイトルを獲得、クレベル・コイケは朝倉未来を三角絞めで失神させた。ブラジルから祖先の国に“出稼ぎ”で渡り、そこで“日本発ブラジル育ち”の柔術を武器に成り上がる。そんなストーリーもドラマティックだった。
“朝倉兄弟vsボンサイ柔術”
この海vsヤマニハ、闘いの構図はつまり“朝倉兄弟vsボンサイ柔術”だ。海のコーナーには未来がいて、ヤマニハのセコンドにはサトシとクレベル。そういう“画”まで主催者がイメージしてのマッチメイクだったのである。ファンにとっても感情移入しやすい、盛り上がるカードだ。
対戦決定の記者会見で強気なコメントを発したヤマニハに、海は「ボンサイの選手はリスペクトしてたけど、ボンサイの一番弱い選手が勘違いしちゃってるんで、分からせようと思います。ボコボコにします」。ヤマニハは柔術=寝技だけでないオールラウンダーとして評価されていたが、下馬評ではやはり海が優位だった。