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「ガチで生きる」那須川天心、キック残り3試合でも“別れの感慨なし”の理由とは? 9.23RISEは“因縁の相手”で「(KOは)めちゃめちゃ意識」
posted2021/09/21 17:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
いよいよカウントダウンだ。那須川天心は来年からボクシングに転向することを表明しており、キックボクシングの試合は来年早々、ホームリングRISEのビッグイベントが最後になるという。那須川の“蹴り”が見られるのは、あと3試合だ。
そのうちの1試合が、間近に迫っている。9月23日のRISE(横浜・ぴあアリーナMM)だ。対戦相手は鈴木真彦。コロナ禍で外国人選手が来日できない状況だけに、RISEでは現状この男しかいないと言っていい。
鈴木はRISEのバンタム級(55kg)チャンピオン。かつて那須川も巻いたベルトだ。いやベルトだけでなく、鈴木は常に那須川を追っていた。
両者はキャリアの初期、2015年の『BLADE』トーナメント1回戦で闘っている。結果は1ラウンドKO、もちろん勝ったのは那須川だ。
それ以後、鈴木は“打倒・天心”を意識しなかった日がないという。昨年11月まで、実に20連勝。那須川との対戦をかけたトーナメントの決勝まで進んだ。だが、あと1勝で念願のリマッチというところで、志朗に敗北。那須川は「もうやることはないと思います」と語っていた。鈴木自身も「終わった」と感じた。
だがそれでも、リングに戻ると今年は2連勝。そして9.23横浜大会でチャンスが巡ってきた。消去法で選ばれたというところはあるのだが、それも含めて鈴木は「運命」だと思っている。
「(KOは)めちゃめちゃ意識しますね」
実は鈴木には、少し前にも那須川戦の話があった。6月に開催されたRIZINの東京ドーム大会への出場を打診されたのだ。結果的に鈴木は試合を受けず、キック公式戦の対戦相手がいないことから那須川は異例の1vs.3マッチを敢行した。
「その件に関しては僕のプライベートな事情もあって。コメントを控えたいと思います」
那須川戦決定の記者会見で、鈴木はそう語っている。よほどの事情があったのだろうと察するしかない。察する必要がないのは、那須川ただ1人。会見での那須川は終始、厳しい表情を崩さず、鈴木と向き合っての写真撮影でも目を合わせることがなかった。
会見で那須川に「今回はKOは意識しますか」と聞いてみた。普段の那須川のスタンスは「試合は勝ち負けを競うもの。勝つために最善のことをする」というものだ。だから「負けてもいいからKOを狙って思い切り攻める」という考えはない。ただ今回は「負けてもいいから」は絶対にないにせよ、何かいつもとは違う気がしたのだ。那須川の答えはこうだ。
「(KOは)めちゃめちゃ意識しますね。そこはマストというか。試合とは違う部分もあって」
試合とは違う部分とは何か。
「僕は格闘家なので試合が一番大事なので。プライベートの事情というのも分かりますけど、試合より大事なことがあるというのは僕には分からない」