濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「RIZINの中心は朝倉兄弟」朝倉海が語った“チームとしてのプライド” ボンサイ柔術との思わぬ苦戦で得た手応えとは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/09/22 17:02
9月19日のRIZIN.30にてアラン“ヒロ”ヤマニハに粘られながらも勝利した朝倉海
実際、ゴングが鳴ると序盤は海が圧倒した。常に圧力をかけ、ヤマニハにロープを背負わせて打撃を当てていく。特に右のパンチが重い。早い段階でのKOもあるのではと思わせる展開だった。
ところが、そこからヤマニハが粘りに粘る。ダメージはあるはずなのに果敢にパンチを打ち返し、組み付くとしつこくグラウンドへ持ち込もうとする。引き込んで三角絞めを狙う場面もあった。
海の三日月蹴り、ボディへのパンチも何度となくヒット。いつ倒れてもおかしくない状態から、ヤマニハは猛反撃を見せた。結果は判定3-0で海の勝利。だが印象としては“ヤマニハ大健闘”だった。本人は試合を終えて「勝ったと思った」そうだ。
「メインイベントを任せてもらって、KOか一本で勝つつもりだったんですけど。ふがいないです。1ラウンドに何度か効かせたんですけど、倒すことを意識しすぎて詰め方が雑になってましたね。絶対に倒したいという気持ちが前に出すぎて、冷静に詰められなかった」(海)
実は海は1ラウンドに右の拳を傷めていたという。そう言われてコメント中の海の姿を見てみると、マイクを持つ手が左だ。ファイティングポーズでの撮影も、右手を握ることができていなかった。
ただ、そこから蹴りや左のパンチをボディに集中させたのは海の非凡さだろう。組み技の展開で脱出するまで時間をかけすぎたという反省もあったが、ピンチというほど追い込まれたわけではなかった。
「RIZINの中心は朝倉兄弟でありたい」
今回はボンサイ柔術の選手に勝ったが、だからといって“兄の仇討ち”という感覚ではなかった。未来が負けたクレベルと闘ったわけではないのだ。ただ、こんな言葉も口にしている。
「ボンサイ柔術の選手がチャンピオンになったり勢いがあるけど、RIZINの中心は朝倉兄弟でありたいという気持ちが強いです。僕らが(RIZINを)引っ張っていきたい。チームとして負けたくないという気持ちでした」
兄が勝てば弟も注目される。弟の活躍で兄の名も上がる。“朝倉兄弟”として闘うことについて、2人はかつてそう語っている。
一方のヤマニハ。1ラウンドに右のパンチで倒れそうだったと明かしたが、そこで自分を救ってくれたのは「ジム」だったという。
「アサクラが強いのは知ってた。打撃がうまい。でもジムを信じてる。だから僕の心は強い。ジムでハードなトレーニングをしてきたので。だから悪い状況になってもまだ闘えると思った」
やはりこの試合は“団体戦”だったのだ。