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「こんなにお行儀のいいデモは…」「コンビニの冷やし中華は、最高」英国メディアの記者が見た東京五輪、不思議なTOKYOの街とは?
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2021/08/12 17:02
幕を閉じた東京五輪。間近で競技に触れた海外メディアの記者たちはどんな大会として振り返るのだろうか
――14日間の規制期間後の行動は?
ガーサイド記者:同僚たちと銀座に散策に行き、ガード下の屋台でつまみを食べながらビールを楽しむ機会もありました。渋い日本を感じることができ、素晴らしい夜でした。ただ、このご時世だというのに狭いスペースに多くの人が隣り合わせで座り、タバコを吸っている人も多く見かけました。行儀が良く、徹底的にルールを順守する日本人ばかりを見てきたので、この夜の経験には新鮮さすら覚えました。
バトラー記者:日本に住んでいた頃によく行っていた原宿の竹下通りにも行ってみましたが、この通りがこんなに空いているのは初めて見ました。外出を控える人が多いからでしょうが、街で見かける人たちは皆、普段の暮らしを続けているように見えました。緊急事態宣言が出されているとは言え、電車は普通に走っていますし、バーやレストランも開いています。常時と緊急事態が入り混じったような、不思議な状態に見えました。
《オリンピックの取材で東京へ来ているとは言え、旺盛な好奇心はジャーナリストの性。スポーツの祭典から一歩離れた場所で現在の東京の姿を見ることができたのは、両記者にとっての収穫の1つだっただろう。》
――改めて、今回の東京オリンピック取材を振り返っての感想は?
ガーサイド記者:今回東京で接した人たちは、本当に皆やさしく礼儀正しい人たちばかりでした。過剰なルール遵守へのこだわりという面も見ましたが、私は非常にいい経験をさせて貰ったと思っています。我々外国人記者をサポートしてくれたボランティアの方たちや、東京の人たちには本当に感謝しています。
バトラー記者:予想外な程に我々を歓迎してくれた日本人や、オリンピックに興味を示していた地元の人たちには、本当に嬉しい驚きを感じました。本当に残念なのは、スポーツ最大の祭典であるオリンピックに、観客が入れるイベントが殆どなかったことです。
《大会運営をサポートしたボランティアや、東京の一般市民が外国人記者たちに感謝されているのは、日本という国にとって朗報でもある。賛否両論のなかで開催された今大会だが、スポーツが人を惹きつける力も見ることができた両記者は、充実した3週間を過ごすことができたようだ》
◇◇◇
両記者ともに日本での経験があり国際経験も豊富なベテランだけに、多少の不都合には文句を言わない精神的な強さがある。ロンドン大会の29個、リオ大会の27個には及ばなかったが、日本に次いで第4位の22個の金メダルを獲得したイギリスのスポーツ記者にとっては、今回のオリンピックはいい大会だったのだろう。
コロナ禍に苦しんできた世界に、スポーツを通じて興奮と笑顔を届ける。そんな使命と共にイギリスから東京にやってきたこの2人のスポーツジャーナリストは、メダルに値するような素晴らしい仕事をこなし、大会を後にした。