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[笑顔のダブル表彰台]野中生萌/野口啓代「受け継がれしクライマー魂」
posted2021/08/12 07:00
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
ひたすら頂を目指し、湾岸の壁に挑んだポニーテールの2人。クライミング界の先駆者と継承者の物語は2つのメダルに結実した。
あきよちゃん。
みほう。
いつからそう呼び合うようになったのか、そもそもいつ知り合ったのか、当人たちも定かではない。ずっと昔からクライミングジムで面識だけならあったはずだ。
はっきり意識するようになったのは、8歳年下の野中生萌が'14年に日本代表入りし、一緒に国際大会を転戦するようになってから。仲間として、ライバルとして、同志として、切磋琢磨しながら2人は日本のスポーツクライミングの世界を切り開いてきた。
「昔から(野口)啓代ちゃんが隣にいるっていうだけで気が引き締まるし、彼女がいることで目指すもの、それを越えていこうというのが見えていたので、いてくれるだけで頑張れていました」
「生萌と表彰台に乗れたのは最高の結果です。ここまでずっと2人で高め合ってきましたし、刺激し合うことで頑張ってこられたので本当にうれしい」
赤いポニーテールを揺らす24歳と日の丸カラーのリボンをたなびかせた32歳は、それぞれのメダルを手に、仲のいい姉妹のような佇まいで表彰台で肩を並べていた。
今大会から採用されたスポーツクライミングは「スピード」「ボルダリング」「リード」の複合方式で行われた。定型のホールドを駆けあがるタイムを競うスピード、複数の課題の完登数を競うボルダリング、頂上に向かって最高到達点の高さを競うリード。それぞれ短距離走、中距離走、長距離走にも例えられ、特性がまるで異なる。そんな各種目の順位をかけ算して総合順位を算出するところに勝負の綾がある。