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「こんなにお行儀のいいデモは…」「コンビニの冷やし中華は、最高」英国メディアの記者が見た東京五輪、不思議なTOKYOの街とは?
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2021/08/12 17:02
幕を閉じた東京五輪。間近で競技に触れた海外メディアの記者たちはどんな大会として振り返るのだろうか
――開催反対の意見を持つ人たちによる、抗議デモなども話題となりました。
ガーサイド記者:確かに抗議デモを見かけましたが、こんなにお行儀のいいデモは見たことがありません。プラカードを持ち、反対意見を発しているようでしたが、暴力的な行動も態度も全く見せずに、非常に平和的なデモだったように見えました。
バトラー記者:多くの人が東京オリンピック開催に反対の意見を持っているとニュースで見ていましたが、開会式の日には我々外国人記者に向かって「Welcome to Japan!」と言ってくれる人を多く見かけました。大会期間中、外国人記者たちを乗せたバスに笑顔で手を振ってくれる人たちも沢山いました。これには、正直驚きました。
《大会前の世論調査やコロナ対策の規制もあり、ガーサイド記者は「正直、東京には行きたくなかった」とまで言っていたが、実際に東京に行ってみて、両記者ともに嬉しい驚きに多く出くわしたようだ》
――ネガティブな経験などはしなかったか?
ガーサイド記者:大会が運営するバスがあまりにも時刻表通りの運行にこだわっていたのか、出発時刻の1分後にバス停に到着したとき、乗せてくれと必死で合図する我々を置いて、誰も乗せていないバスが走り去っていったことがありました。他にも、何も考えずにルールだけを振りかざすスタッフに遭遇する場面もありました。ただ、私はこういう場面も想定していたので、あまり気にしていません。
バトラー記者:BMXの競技が行われていた日、会場の周辺から競技を見ようとしていた人たちを、警察官が咎めているような場面を見かけました。反対意見が多いと言われたなか、何とか競技を見ようとする人たちのオリンピックへの関心は嬉しい驚きでしたが、それを咎める警察官はちょっと残念でした。
ただ、数日後、同じ場所に同じ警察官がいたので、競技を見ようとしている人たちに注意していたのですかと聞くと、「まぁ、少しだけ……」という答えが返ってきました。競技場の外から立ち見する人を注意するのが仕事だったのでしょうが、あまりうるさいことを言うのも気が引ける、という気持ちだったのかもしれません。
《昨年からのコロナ規制に関しても、欧州諸国に比べて比較的緩く、実用性を重んじた規制を敷いてきたイギリス。そんな国から来た両記者にとっては、日本的とも言える極端に厳しいルール遵守が、やや滑稽に見えたのかもしれない》
コンビニの冷やし中華
――一部で話題となった、MPC(メインプレスセンター)やホテルでの食事については?
ガーサイド記者:日本人が普段こんな粗末な食事を食べていないことは皆知っていますし、最近の国際スポーツイベントでは、どこでももっといい食事が提供されています。ただ、何かと規制の多い中での運営だったことを考えれば、これは仕方のないことだと思います。まぁ、私はお腹が空いた時は、何でも黙って食べましたが。
バトラー記者:私は、食事はコンビニで買ったものと、ホテルで頼んだUberEatsで何の問題もありませんでした。暑い日に食べるコンビニの冷やし中華は、最高です。
《国際経験も豊富な両記者は、一部で批判された食事についても特に気に留めていない模様。あるものを黙って食べ、仕事に集中する精神には、アスリートのような逞しさすら感じる》