スポーツまるごとHOWマッチBACK NUMBER
侍ジャパンも多数使用! 飛行機の窓と同じ素材の“超頑丈”なフェイスガードなのに…高校球児は使っちゃダメ?《謎ルール》
posted2021/08/08 11:02
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Hideki Sugiyama
気がつけば浸透しているスポーツギア。日本のプロ野球界では、2019年からフェイスガードをつけて打席に立つ選手が急増した。
それまでズレータなど個人で使う選手はいたが、球団単位でいち早く導入したのが巨人。球団独自で試験を行ない、原辰徳監督が「実際に試して選んでくれ」と現場に号令をかけたことで、多くの選手が着用するに至った。
ただ、フェイスガードには多くの製品があり、質も違う。そのことはプロ野球選手も含めて、実はあまり知られていない。
いま現場でもっとも支持されているのが、米マークワート社の「C-FLAP」、税抜き5000円。'14年、死球で顔面を複雑骨折した現ヤンキースの主砲スタントンが愛用したことで広まり、侍ジャパンにもユーザーが多い。
同商品を扱う「カシマヤ製作所」の西上茂社長は、複数の社のフェイスガードを並べて「どれが一番強いですか」と筆者にたずねた。
素材の違いは、素人の私にも明らか。いちばん強いと思ったものが、やはりC-FLAPだった。実はこれ、飛行機の窓や軍事用品にも応用される、ポリカーボネートでできているのだ。仮にフェイスガードをつけても、素材が弱ければ破損して逆に凶器になりかねない。
「またC-FLAPは他社製品に比べて、角度の調節が自由にできるので、選手の体形、スイング軌道に合わせられる利点もあります」
意識の高い選手ほどC-FLAPを選ぶというが、プロであれば当然の選択だろう。
高校野球などでは“使用禁止”のナゾ
だが、ここで素朴な疑問が浮かぶ。
春のセンバツ高校野球では、だれもフェイスガードをつけてなかったような……。
西上社長は表情を曇らせていう。
「実はアマチュア球界では認められていないのです。学生や社会人野球では製品安全協会が認定した証であるSGマークつきのヘルメットの使用が義務づけられていて、フェイスガードをつけると改造したと見なされ、SGマークを取り消されてしまうのです」
西上社長は'19年、同協会が検査を委託する機関にC-FLAPをつけたヘルメットを持ち込んで検査をしたが……「C-FLAPをつけたほうがヘルメット自体の強度が上がることが、科学的にも証明されました」。
こうなると、C-FLAPをつけるとSGマークが無効になる理由がわからない。日米の一流選手から安全性を評価されるギアが、なぜか使用禁止に。アマチュア選手を危険から守る、ルール改正が望まれる。