熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「従来の日本式の判定に」「肉親でも会うことは…」日本柔道躍進と“バブル方式”五輪、他国視点でどう感じた? ブラジル男子監督の日本人女性に聞く
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/04 17:02
藤井裕子監督のもとで銅メダルを獲得したカルグニン(右端)
――藤井さんご自身は、今後はどうされるのでしょうか?
藤井監督:いずれ、ブラジル柔道連盟の関係者と話し合うことになると思います。
――もしブラジル柔道連盟から契約延長の話があれば、どうしますか?
藤井監督:前向きに考えると思います。
――日本では、愛知県にお住いのご両親らと会う機会はあったのでしょうか?
藤井監督:いえ、会えませんでした。私たちは行動が厳しく制限されており、肉親であっても選手村の外の人と会うのはほぼ不可能でした。出国するときに羽田空港で会えるかもしれないと思ったのですが、それも叶いませんでした。
――リオで待っているご家族に何かお土産を買いましたか?
藤井監督:主に食料品や子供たちへのおやつを買いました。当分、これでまかなえそうです(笑)。
「まずまずの結果を出すことができて……」
大会前、「表彰台に上がるのが子供の頃からの夢」と語っていたカルグニンが3位決定戦で勝ち、藤井監督と2人で泣きながら抱き合う光景には心を揺さぶられた。
藤井監督も、現役時代に戦った柔道の聖地、日本武道館で外国代表の監督としてメダル獲得に貢献して、深い感慨を覚えたに違いない。
「まずまずの結果を出すことができて、今はほっとしています」と言いながらも、すでに今大会で得た教訓などをブラジルの柔道関係者と話し合っていると聞いて、引き続きブラジル柔道の強化に寄与したいという意欲を感じた。
仮に藤井さんがパリ五輪までブラジル柔道男子代表の監督を続けるとすれば、ブラジルでの指導歴は11年。英国でコーチを務めた2年間を加えると、外国での指導歴は実に13年に及ぶことになる。日本人で、これほど長期間、外国で代表チームを指導した例はほとんどないのではないか。
今大会の男女混合団体で日本を倒したフランスは世界でも屈指の強国であり、3年後の自国開催の五輪に向けてさらなる強化を図るのは間違いない。日本、フランス、さらには東京五輪で好成績を残したジョージアなどに対抗してブラジル柔道男子代表をさらに強化するのは、決して容易なミッションではないだろう。
それでも、日本人が外国に根を下ろして柔道の指導をすることは、その国の柔道の発展と日本との友好、そして柔道の世界的な発展に寄与することになる。
藤井裕子さんの長期間に及ぶ粘り強い挑戦は、非常に重要な意味を持つのではないだろうか。
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