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全英オープン優勝コリン・モリカワ(24)はなぜタイガー・ウッズを超えられた? 英国リンクスを制した「技術」と「勇気」【東京五輪も出場】
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2021/07/20 06:00
全米プロに続き、全英オープンでも「初出場メジャー優勝」を達成したコリン・モリカワ
首位を独走してきた南ア出身のルイ・ウエストヘーゼンとは1打差の2位でスタートしたが、ウエストヘーゼンは2010年大会の覇者であり、追撃をかけてきた米国出身のジョーダン・スピースは2017年大会の覇者。
勝利を競い合う選手たちには全英オープンを制したという実績も経験もあった一方で、初出場のモリカワにはそれが無かったが、そのハンディキャップを逆手に取る発想の転換が彼にはできていた。
「僕の経験は、この3日間だけだけど、このコースでいいプレーができた3日間の経験を生かすことができる。去年の全米プロを制して得た自信もある。最終日にたとえ何が起こっても、僕にはいいショットが打てる、打てていると信じ続け、打ち続けるのみだ」
そう信じ続けたことが、モリカワの心を誰よりも強くしてくれた。
最終日は4バーディー、ノーボギーの見事なゴルフだった。グリーンを外しても冷静に寄せワンでパーを拾い、何にも動じなかった強靭な精神力が、彼を勝利に導いた。
「昔の方がはるかに難しかった」
英国ロンドンの南にあるロイヤル・セントジョージズで全英オープンが開催されたのは2011年以来、10年ぶりのことだった。
この地で初めて全英オープンが開かれたのは1894年。今回は15度目を数えるが、ロイヤル・セントジョージズの難しさは、実を言えば、「昔のほうがはるかに難しかった」と、欧州ゴルフの歴史家たちは口を揃える。
「とりわけ6番のパー3は選手たちを震え上がらせていた」
現在の6番グリーンの左脇にはメイドンと呼ばれる小高い丘があり、大勢のギャラリーが丘の上から観戦している。だが、かつてはメイドンが6番のティとグリーンの間にそびえ、選手たちの視界もショットも遮っていたという。
「メイドン越え」で190ヤードも先の小さなグリーンを、ガタパーチャと呼ばれていた飛ばないボールで狙うブラインドショット。少しでも手元が狂えば、現代より格段に深いラフにつかまり、現代のように優れたサンドウエッジがあったはずもなく、その地獄からの脱出は至難のワザだった。この1ホールだけで45打を要したという恐ろしい記録も残っているのだそうだ。
「それに比べたら、昨今のロイヤル・セントジョージズは易しくなっている」
だから今年のロイヤル・セントジョージズでは、記録的にスコアが伸びたのだとヒストリアンたちは指摘する。
だが、晴天続きで日に日に干上がっていったフェアウエイやグリーン、深いラフやフェスキュー群、きわどいピン位置、そして深いポットバンカーは、やっぱり途轍もなく厳しいセッティングだった。