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18歳ペドリのような才能育成、イタリア的に楽しむ、イングランドの“あるエキスパート”… EUROから日本が学べそうな“3要素”って?
 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2021/07/19 17:02

18歳ペドリのような才能育成、イタリア的に楽しむ、イングランドの“あるエキスパート”… EUROから日本が学べそうな“3要素”って?<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

イタリアの優勝で幕を閉じたEURO。ペドリらのプレーを含めて日本と欧州の違いが見える4週間でもあった

 英『テレグラフ』紙によると、彼は人々が心理学者と聞いて想像するような典型──スピーチやカウンセリングなどをする専門家──ではなく、チームの準備について細やかなアドバイスをしたり、選手たちとコーヒーを飲んだり、フランクにおしゃべりしたりする役割を担っているという。博士号を取る前はこの競技の指導者でもあった彼は、「このスポーツには4つの柱があると言われる」と話す。

「それは技術と戦術、フィジカル、メンタルだが、メンタルは疎かにされてきた。だが試合中には、さまざまな場面で心理的な負担が生まれる。それは簡単に制御不能に陥ってしまうものだ。選手の感情は、様々な影響を受けやすいものだから」

 先日、女子テニスの大坂なおみが明かしたメンタルヘルスの問題を受け、日本サッカー協会の反町康治技術委員長は「心技体と言われるが、心はコントロールが難しい」と語りつつ、「(代表に外部からの専門家の招聘は、現在の)バブルの状況では難しい。現状では考えていない」と説明。今は、監督とコーチ陣が「かなり(選手たちの)メンタルをケアしている」とも話した。

 文脈が異なるため、単純に比較はできないし、ミッチェル博士のように、フットボールと心理学の双方を深く理解する人材は、なかなか見つからないかもしれない。ただし世界のトップレベルでは、心技体のすべての面でエキスパートの指導を仰ぐのが、主流になりつつある。

(3)若手の抜擢を大胆に。ひいては育成の重要性

「主要大会で18歳の選手があのような姿を見せたのは、初めてだったと思う。パフォーマンス、試合の流れを読む力、スペースの見つけ方、パーソナリティー、そしてクオリティー──それらはこれまでに見たことがないものだった」

 イタリアとの準決勝で惜敗した後、スペインのルイス・エンリケ監督はペドリについて、嗄れた声でそんな風に語った。彼は別格だとしても、今大会では多くの若手が檜舞台の重圧や対峙するビッグネームに怯むことなく、のびのびと躍動した。

 ウクライナの躍進を最後尾から支えたイルリャ・ザバルニイ(18歳)、超速の仕掛けで会場を沸かせたベルギーの新兵器ジェレミー・ドク(19歳)、最後は涙に濡れたが明るい未来を感じさせたイングランドのブカヨ・サカ(19歳)、クロアチアの左サイドに空いた穴を見事に埋めたヨシュコ・グバルディオル(19歳)、今大会唯一の直接FKを沈めたデンマークのミケル・ダムスゴール(20歳)らは、年齢にそぐわない堂々たるパフォーマンスを披露。

 それが実現したのは、選手の高い能力に加え、周囲の適切なサポートや指揮官の英断、ひいてはそうした才能を育んだ現場の努力の賜物だろう。

【次ページ】 ペドリのように、シンプルながら効率の良い技術を

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ロベルト・マンチーニ
ペドリ
カタールW杯

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