球体とリズムBACK NUMBER
18歳ペドリのような才能育成、イタリア的に楽しむ、イングランドの“あるエキスパート”… EUROから日本が学べそうな“3要素”って?
posted2021/07/19 17:02
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
REUTERS/AFLO
時を忘れてしまうほどの激戦の連続、数多のドラマと忘れがたき名場面、栄冠にふさわしい優勝者たち──。1年遅れで開催されたEURO2020は、誰もが待たされたぶん、いつも以上の熱を生んだ。観衆つきのリアルな国際大会は、パフォーマンスの質も総じて高い、至高のフットボールの祭典となった。
このトップレベルの主要大会から、日本のサッカー界とその代表チームが参考にできることは、きっとある。情報化が著しく進んだ現在、戦術的な発見は限られたものの(攻撃時の5トップなどもクラブレベルで見られたものだ)、別の面でチーム力を高めるヒントはあるはずだ。この国では社会全体が内向きになっている気配もするが、ことフットボールに関して、外に目を向けないまま発展を遂げるのは難しい。
来年11月からカタールで開催される予定のW杯で(あるいはその後に)、日本代表が目標とするベスト8に辿り着くためにも、先の欧州選手権から学べそうな点を探ってみた。
(1)選手もファンも心から楽しみ、それを表現すること
「エンターテイメントと面白さ」
優勝したイタリアのロベルト・マンチーニ監督は決勝前日の会見で、同胞の女性記者から現在のチームを形容してほしいと訊かれ、そう返答した。「以前にも言ったように、選手たちは生き生きと楽しんでいる。明日の決勝も大いに愉しんでもらいたいし、最後にもう一度だけ、イタリア国民を喜ばせてほしい」と続け、翌日には自信満々に彼らの新しいカルチョを楽しみ、見事に欧州制覇を成し遂げた。逆に敗れたイングランドは、最後の最後に重圧に屈したような気がする。
そう、フットボールは勝負事であると同時に娯楽であり、楽しさや喜びを感じながらプレーする方が、好結果に繋がりやすい。それはほかの多くのスポーツにも通じることだろう(Sportという言葉自体、そういう意味を持っている)。