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日本人選手“10代メジャー直行”の賛否…結城海斗19歳の“解雇”で考える 菊池雄星は「高校生がマイナーに飛び込むのは大変」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2021/07/02 17:30
2018年7月、結城海斗のロイヤルズ入団発表。日本の高校に進学せず、日本選手としては史上最年少(16歳2カ月)での大リーグ挑戦となった
「メジャー挑戦というからには英語を頑張って欲しいなというところはあります。でも、そこさえクリアしたら、何が問題ですか?って思います。そして、ある程度の有望株の選手だったら、高卒で行っても、向こうの契約で織り込んでもらいやすいのが、大学卒業までの学費です。大学に通うということです。アメリカの大学ってちょっとずつ通えるじゃないですか。アメリカにいる選手で、引退後に医者になる選手や『この選手は引退しても稼ぎそうだな』というタイプはいました。オフに大学で勉強して、セカンドキャリアを考えながらプレーしている選手は多いんですよ。日本のプロの球団は高卒で入っても、大学の授業料をだしますよって言ってくれるチームはない。向こうでそれができるのだと考えたら、言葉を覚えることができて、向こうの大学卒業までサポートしてもらえるのはメリットしかないですよね」
この指摘には日米の考え方の違いを感じずにはいられないが、方法として可能性のあることかもしれない。
アメリカではプレーをしながらセカンドキャリアを既に考えていて、そのために大学に入学するという。そこで得られるものがあれば、引退後の生活が約束される。約束されるからこそ、プレーしているときは、全力で打ち込める。
「夢を壊す人って、実は一番近くにいるんです」
日本の場合だと、かつて西武時代の菊池が教職免許を取るために通信で勉強したいという意向がメディアに出ると、彼は一斉に批判された。引退後のことを考えることは御法度とされる文化がある。
こと「メジャー挑戦」という部分を見るのなら、プレーすることと「大学入学」という二足のわらじが挑戦者を助ける大きな要素になる。この考えは、ややもすると、「高卒メジャー」の成功例に該当してくるかもしれない。
「夢を壊す人って、実は一番近くにいるんです。家族とか、学校の先生とか。親心で『大丈夫?』とブレーキをかけてしまう。僕は幸いなことに、家族とか、高校の先生とか、仲間とかがメジャーで活躍するところを見たいってみんなが言って積極的に応援してくれたので、その夢を追い続けられました」
菊池は実感を込めてそう語っている。
高校生など若い年齢からのメジャー挑戦は、日本にとっていまだ高い壁になっているのは間違いない。ただ経験者たちの言葉を聞いていくと少し希望も見えた気がする。
いかに周りが本人の夢を理解し、成功するための道筋を共に考えてあげられるかだろう。「ただの夢」として片付けるのではなく、どうすれば導けるのか、どこまでの覚悟があるのか、本人がどうすれば立ち向かえるのか。
結城の挑戦がうまくいかなかったのは残念であるが、彼の挑戦に関わったスカウトら周囲の影響力が大きく関係していることは間違いない。次の挑戦へ向けては、この経験をどう活かすかが、これからの野球界に大きな意味を持つだろう。
結城はまだ19歳。現役を終えるような年齢ではない。彼の再起を願うとともに、史上最年少の日本人が挑戦して見えた課題を今後に生かしたい。