「誤解されているところがあるんですけど、僕は当初からメジャーの舞台に立てると思ってきたわけじゃないんですよ。自分がどう成長できるかを考えたときに、社会人から日本のプロに行く場合は『即戦力』という見られ方をする。でも、当時の僕はその自信がなかった。どうやったら成長できるかという観点で考え、じっくり育ててくれるのがアメリカの方でした。その時の自分が成長できる方をとっただけなんです」

　冷静な判断のもとに田澤はアメリカを選んだ。

　レッドソックスに入団した後に故障などで苦しんだこともあったが、2013年にはセットアッパーとして世界一に貢献。日本で唯一のトップアマから海を渡った成功例になった。

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　こう考えていくと田澤が理想形と言えるかもしれない。ある程度の成熟度が求められ、海を渡ることを「挑戦」として捉えるのではなく、自分にとっての「最適」を探す。高卒メジャーより田澤の経歴が理想的と言える。

逆に言えば苦労するのは「英語力」だけ

　ただ、もう一つ、新たな発想を唱える人物もいる。

　パフォーマンスアップスペシャリストの高島誠だ。MLBワシントン・ナショナルズのトレーナーとしての経験がある高島は日本のプロ・アマ選手のトレーニングなどの指導に尽力している。プロでは山岡泰輔（オリックス）や、今季、売り出し中の杉本裕太郎（オリックス）、高橋礼（ソフトバンク）のパーソナルトレーナーを務め、アマチュアでは中国地区の高校・大学を中心にチーム指導を行っている。

　高島はいう。

「メジャーで通用するためにも早めに馴染んでおいた方が上がってからの苦労も少ないと思います。日本のプロ野球で活躍してから行けばいいという考えもあるんですけど、そもそも、通訳やサポートなど全てがついて至れり尽くせりで行くことは『メジャー挑戦』ではないですよね。高卒の投手なら155キロ、160キロくらいを投げられないといけないですけど、トレーニングをしっかり積めば、目指せる子はかなりいると僕は思います」

　向こうで苦労するのは「英語力」と断言するが、言い換えればそれだけだと高島はいう。

米球団は「大学の授業料だしますよ」

　コミュニケーションさえクリアできれば挑戦はすごく楽なものになる。決して簡単なことではないが、そこで高島はこれまでの日本人プレイヤーが考えたこともなかった新たな発想を持つことを提案する。

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