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「五輪の1年前から生理が完全に止まっていました」女性アスリートが告白する過去の失敗《無月経でとった金メダル》
posted2021/07/15 11:01
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
JMPA
女性への質問にいわゆる禁句は少なくないが、おそらく最たるタブーが生理だ。健康なら誰しもあって当然なのだが、滅多に「私の場合は」と口にすることはない。ところが近年、タブー視されてきた生理がスポーツ界で幾度となく話題に上がる。陸上競技1万mで東京五輸出場が内定した新谷仁美選手がレース直後に「今日は生理なので」と発言するなど、選手自ら発信する機会が増えたことも理由の1つだ。
生理と重なった五輪
多くのアスリートが生理を語り始めた中、先駆け的存在と言えるのが元競泳日本代表、現在は「スポーツを止めるな」理事で「1252プロジェクト」リーダーを務める伊藤華英さんだろう。現役引退から5年後の2017年に自ら執筆した記事で、アスリートの生理と競技の関係について触れた。「選手としては大変なのも“当たり前”と捉えていたのであれほど話題になると思わなかった」と笑うが、伊藤さんにも生理にまつわる苦い経験がある。
日本選手権の100m背泳ぎで59秒83の日本新記録を打ち立て、初出場した08年の北京五輸。本番の日程が月経周期と重なるため、選考会を終えた直後の4月からピルを飲み、生理をずらそうと試みたが、体重増加など副作用も生じ、五輪本番の結果は100mで8位、200mで12位に終わった。
「当時はピルに対する知識もなく、服用したのも初めて。もっと前からトライしていれば、自分に合うピルを見つけ、生理の周期だけでなくPMS(月経前症候群)や痛みを和らげたり、副作用があるならピルを飲まずに臨む決断もできたはず。知っていればもっとできたんじゃないか、という後悔がありました」
「すぐ病院に行かなければダメ」
今だから話れる失敗談だが、現役時代は目標に向け厳しい鍛錬は当たり前。痛みや周期の乱れがあっても「生理だから仕方ない」と放置されることも多く、特に深刻なのが無月経だ。
前述の新谷選手に代表される陸上競技の長距離選手や、新体操など審美系競技選手と同様に、過度な減量で無月経に苦しんだのが小原日登美さん。12年のロンドン五輪レスリング48kg級金メダリストである小原さんは10代の頃から生理不順や無月経に悩まされていた。