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[2度の遠回りを越えて]桃田賢斗「頂点はまだまだ先に」
posted2021/07/16 07:01
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Itaru Chiba
2016年のリオ五輪は、賭博問題で出場できなかった。'20年1月にはマレーシアで、生死にかかわる事故に遭った。目標だった東京五輪も、1年延期となった。幾多の逆境を経験した世界ランク1位の王者は、五輪が行われるはずだった昨年7月、福島のとある体育館にいた。その眼は一体何を見据えていたのか。
桃田賢斗は前髪を金色に染めていた。大人の慎みと子供の無邪気さを混ぜ合わせたような、程良い黄金色だった。
「金メダルを意識しながら、気分を明るくしようということで、イメージチェンジをさせてもらいました」
代表選手がメディアの取材に応じた7月8日、左胸に日の丸のエンブレムをつけた桃田は吹っ切れたように笑っていた。
代表を指揮する朴柱奉(パク・ジュボン)は言った。
この5年で最も成長したのは桃田だ――。
「嬉しいですね。自分が成長できたのはメンタル面だと思います。リオの前は金メダルを取りますとは言えなかったと思うんですが、今ははっきりとそう言えるので」
違法カジノ店に出入りしたことで、リオ五輪を棒に振ってから、桃田は強くなった。相手の足を止めてしまう変幻自在のシャトルさばきと、鉄壁のフットワークを磨き上げて世界王者となった。ただ、もっとも強くなったのは内面だった。
かつて、福島県立富岡高校(現・ふたば未来学園)のバドミントン部で桃田を指導した本多裕樹は、ちょうど1年前の夏に、桃田が遠回りの末に手にしたその強さを目撃したという――。