酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
西武の平良海馬は“クイックと強心臓の160km腕” 藤川球児の「38試合連続無失点」更新へ強運も味方に【週刊セパ記録】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bykiichi Matsumoto
posted2021/06/22 11:02
恵まれた体格から剛球を投げ込む平良海馬。藤川球児の連続無失点記録まであと「4」だ
開幕からの連続試合無失点記録は2016年に中日・田島慎二が記録した「31」だったが、平良はこれをあっさり抜き、6月20日のロッテ戦で「34」にまで伸ばしてNPB最高となった。
連続試合無失点記録、藤川らの成績は?
また「開幕から」という但し書きを外した「連続試合無失点記録」としてもパ・リーグ記録に並んでいる。
<NPBの連続試合無失点記録5傑とその投球内容>
1位 38試合 2006年 藤川球児(阪神)4/15~7/11
3勝 7S 24H 47.2回24被安打9四死球73奪三振
2位 37試合 2011年 篠原貴行(横浜)7/3~10/2
12H 22.1回11被安打8四死球19奪三振
3位 34試合 2003年 豊田清(西武)4/25~8/8 ※
24S 34.1回14被安打2四死球33奪三振
3位 34試合 2014年 比嘉幹貴(オリックス)7/12~9/19
3勝 12H 31.2回29被安打8四死球20奪三振
3位 34試合 2021年 平良海馬(西武)3/26~
1勝 7S 21H 33回18被安打15四死球43奪三振
※2003年はホールド制導入前
5人のうち豊田は絶対的なクローザー、篠原はワンポイントリリーフ、比嘉はセットアッパー、そして藤川と平良は当初はセットアッパーだったが、連続無失点記録の最中にクローザーに配置替えとなっている。
藤川は投球内容を見ても圧倒的である。47.2回で走者は33人だけ、投球イニングを大きく上回る73奪三振を記録している。「JFK」の中核として、今も語り草になる活躍だったのだ。
四死球が多いながらも攻めの姿勢を徹底
平良は5人の中では藤川に次いで奪三振率が高い。パワーピッチで無失点記録を続けているが、33回で出した走者は33人。しかもそのうち15人は四死球によるものだ。
平良は160km/h近い剛速球と切れ味の良いスライダーやカットボールが持ち味だが、制球力はそれほどよくない。無失点記録中も平均すれば、毎回1人の走者を出しながら、失点を許さなかったのだ。
その秘訣は「クイックモーション」にあると言われている。平良は無走者でもクイックで投げる。だから走者が出ても投球フォームが大きく変わることがない。また、同じクイックでも状況によってタイミングを微妙に変えていると思われる。
もちろん、走者を背負っても攻めの姿勢に徹する強心臓も武器ではあろう。
さらに無失点記録を続けるには「運」も必要だ。
20日のロッテ戦では8回2死一、二塁のピンチで登板し、安田尚憲、藤岡裕大に連続四球を与え1点を許したが、本塁を踏んだのはその前の投手・十亀剣が出した走者だったため、自責点にならなかった。
本人は「納得いかないですね」と言っていたが「持ってる」ことも、記録達成の大きなポイントになる。
太い矢印のような剛球を投げ込む平良のマウンドは、実に爽快。あと1試合でパ・リーグ記録を更新、さらに4試合で藤川球児にならぶ。運も味方につけて、このまま勢いで新記録を狙ってほしい。