Number ExBACK NUMBER
ノムさん「プロに誘ってすまなかったな…」あれから20年、阪神・F1セブンの元メンバーが明かす“野村監督とのその後”
posted2021/06/21 17:03
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
Sankei Shimbun
阪神タイガースのユニフォームを着た陣内智則が切り出した。
「F1セブンって覚えてます?」
すると、スタジオ内にいた芸人たちから一斉に「あぁ~」「おぉ~」とどよめきが起こった。そして陣内は、「F1セブン」のメンバーを指折り列挙する。
「赤星(憲広)、藤本(敦士)、上坂(太一郎)、沖原(佳典)、平下(晃司)、高波(文一)、松田(匡司)……。《F1セブン》って言ったら、他の5球団が警戒するわけですよ……」
画面上には赤星から松田まで、「F1セブン」と呼ばれた7選手の顔写真が1人ずつ表示されていく。2001(平成13)年、当時阪神の監督3年目を迎えていた野村克也が命名した「F1セブン」は俊足選手7名を並べた阪神の秘策だった。陣内が続ける。
「……ただ、ホンマに速いのは赤星だけなんです。パワプロで見たら、平下とか、走力Eなんですよ(笑)」
その瞬間、スタジオ内は爆笑に包まれ、赤星以外の6選手の顔写真が、一瞬にしてカラーからモノクロへと変わっていく――。2020(令和2)年4月23日オンエアのテレビ朝日系『アメトーーク!』の一場面だ。この日は、「ありがとうノムさん芸人」と題して、野村克也追悼企画が放送されていた。この放送から1年以上が経過した今、番組内でも紹介された高波が苦笑いを浮かべる。
「僕と赤星だけが5秒台で、あとは6秒フラット前後だった」
「今でもF1セブンを取り上げていただけるのはありがたいし、嬉しいですよ。野村さんが亡くなられて、『アメトーーク!』でも紹介されました。陣内さんにはディスられたけど、僕らも速かったんですよ。確かに赤星は頭抜けていたし、誰も彼には勝てなかったけど、赤星だけカラーで、僕らを白黒写真にすることはないのにね(苦笑)」
01年春のキャンプで突然誕生した「F1セブン」は、その年のオフ、野村の退陣とともに自然消滅した。しかし、そのインパクトは大きく、野村亡き後も、話題に出ることも多い。現在は福岡ソフトバンクホークスの選手寮副寮長であり、怪我をした選手のリハビリスタッフも務める高波は言う。