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期待も重圧もないドイツが“死の組”を抜けたら…タレント不足でも強靭な精神力と一体感【ミュラー、フンメルスも復帰】
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/06/15 17:00
レーブ体制15年間の集大成となる今大会。優勝候補ではないドイツ代表は“死の組”を突破できるか
時代が変わっても、自分たちを形作る伝統はある。
卓越した技術、戦局をコントロールするプレーインテリジェンス、様々なポジションやエリアでプレーできる順応力、チームのために自分の力を最大限発揮する心構え、苦しい局面でこそ足を止めず、懸命に身体を張ろうとするメンタリティ。
そんなドイツがドイツらしくあるために必要な資質を持った選手こそ、タレントがある選手と言うべきではないだろうか。
大きいのはチームに“魂”を注入できる2人の復帰
そうした意味で、チームに“魂”を注入できるベテランのマッツ・フンメルス、そしてミュラーの2人が復帰したことは大きい。2年半も代表から離れていたとは思えないほどスムーズにチームに溶け込んでいる。
ミュラーは代表では右サイドでプレーすることが多かったが、バイエルンと同じような役割を担うことになった。トップ下の位置でミュラーらしく動く。動きが読めないということで言えば、ミュラーのそれは天性のものがある。動き出しのタイミング、相手が嫌なスペースをかぎ分ける感覚、予想を裏切るダイレクトプレー、そして迫力満点に前線から守備を続けていく姿勢など、闘争心を身体全体で表してくれる。
フンメルスもドルトムントでの起用法と同じように、3バックの左でプレーすることになりそうだ。守備組織を統率し、経験に裏打ちされたポジショニングで相手の攻撃の起点を摘んでいく。ボール保持時は正確なフィードで左右へパスを飛ばし、機を見計らっては得意のアウトサイドパスで相手守備ラインを混乱に陥れる。
確かに、ドイツは優勝候補ではない。グループステージ敗退だってあるだろう。でも追い込まれたときのドイツの力には侮れないものがある。それは歴史が証明している。そして“死のグループ”を突破することができたら……。
「7月半ばまでスケジュールは空けてあるよ」
ミュラーの言葉が意味深に聞こえてくる。