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期待も重圧もないドイツが“死の組”を抜けたら…タレント不足でも強靭な精神力と一体感【ミュラー、フンメルスも復帰】
posted2021/06/15 17:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
「ヨギィは欧州選手権のスタメンを見つけた!」
一般紙『ビルト』は、ドイツ代表が7-1で快勝した6月7日のラトビア代表戦後にそう見出しをつけて報じた。
欧州選手権前に行われた最後のテストマッチ。「FIFAランク138位のラトビアに勝ったところで……」という声がないわけではない。それでもチームとしてのまとまり、プレー内容は少なからず手応えを感じられるものだったことは間違いない。
代表復帰後初となるゴールを決めたトーマス・ミュラーは、「ここまで快勝することができたのはいつかというのを振り返ってみると、かなり前までさかのぼらないといけない。ピッチ上では気分良くプレーすることができた。もちろん(欧州選手権の初戦で対戦する)フランスはまったく違う相手だということはみんなわかっている。それでも今日は非常に納得のいく試合ができた」と、試合後のテレビインタビューで満足そうに答えていた。
代表監督、ヨアヒム・レーブの表情も悪くない。
「多くのシーンでいいプレーをすることができた。前半は前線へのスピードもあったし、走り込むコースも、プレスもよかった。後半になって少しスピードが落ちたのはハードなトレーニングの影響もあったのだと思う」
注目されたのはキミッヒのポジション
この試合で最も注目されたのは、これまでずっとボランチで起用されていたヨシュア・キミッヒが右ウイングバックの位置でプレーしたことだ。
彼のポジションに関する議論は、これまで長く繰り返されてきた。
キミッヒは右サイドバックでプレーする期間が長かったが、もともとはボランチの選手。所属先のバイエルンでもドイツ代表でも、現在はボランチとしてプレーしている。実際、このポジションでは世界有数と言えるだけのパフォーマンスを披露している。
ただし、ドイツ代表の現状を考えるとどうだろう。
ボランチには、イルカイ・ギュンドガン(マンチェスター・シティ)、トニ・クロース(レアル・マドリー)、レオン・ゴレツカ(バイエルン)、そしてフロリアン・ノイハウス(ボルシアMG)と逸材がそろっている。一方、SBは人材難が指摘され続けていた。
同じような議論が2014年のブラジル・ワールドカップ前にもあった。当時ドイツ代表でキャプテンだったフィリップ・ラームは、バイエルンではペップ・グアルディオラ監督(現・マンチェスター・シティ)にボランチで起用されて卓越したプレーを見せていたが、代表では右SBで落ち着くことに。そして、それが優勝の原動力となった。