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期待も重圧もないドイツが“死の組”を抜けたら…タレント不足でも強靭な精神力と一体感【ミュラー、フンメルスも復帰】
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/06/15 17:00
レーブ体制15年間の集大成となる今大会。優勝候補ではないドイツ代表は“死の組”を突破できるか
U-21代表が示したドイツの団結力
その最たる例を見せてくれたのが、弟分に当たるU-21ドイツ代表だ。
内部からも外部からも「タレント不足」と痛烈に批判されていた世代が、3月下旬から開催されていたU-21欧州選手権で見事に優勝を果たしたのだ。ボランチの位置で獅子奮迅の活躍を見せたニクラス・ドルシュは、「僕らは本当にギリギリまで力を出し切った」と優勝後のテレビインタビューで叫んだ。
大会前には「ドイツU-21代表の市場価値は、他国と比べて相当低い」と言われていた。フランスやオランダにはすごい選手がそろっている、と。タッチライン際を何度も往復し、切れ味鋭いクロスで多くの決定機を生み出した左SBダビド・ラウムは、そこに真っ向から反論した。
「僕らはそんなのが大事なんじゃないというのを示したかったんだ。ピッチ上でチームが一丸となることこそが大事で、市場価値が大事なんじゃない。僕らはチームみんなでそれを示すことができた」
W杯優勝時もワールドクラスの選手がいたわけではない
A代表の場合も、似たような話ばかりがメディアでは流れている。
他国には1人で試合を決定づけられるスーパースターがいるのに、ドイツにはいない。点取り屋がいない。試合にリズムをつけられるSBがいない。相手の攻撃を食い止められる守備的MFがいない。
確かに、それは事実だ。でも、ないものねだりをしすぎているのかもしれない。
世界トップに返り咲くために現状を分析し、他国と比較し、長所をなくさないように、足りないところを探し出し、適切な取り組みを模索することは必要だ。間違いなく。
しかし、「勝つために必要なタレントはどんな選手か?」ということを、置き忘れてはいけないのではないだろうか。
2014年、ブラジル・ワールドカップで優勝できたときも、ワールドクラスの選手がいたわけではない。にもかかわらずメッシのアルゼンチン、ロッベンのオランダ、ネイマールのブラジルを凌駕できたのは、ワールドクラスの“チーム”があったからだろう。