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日本新9秒95・山縣亮太が29歳に 「高校生の頃、朝原宣治さんのマネしていました」つながっていた北京とリオの4×100mリレー
text by
宝田将志Shoji Takarada
photograph byNanae Suzuki
posted2021/06/10 06:00
男子100mで日本新記録を樹立した山縣亮太は6月10日で29歳の誕生日をむかえた。高レベルな戦いが続く男子短距離界には東京五輪でも大きな期待がかかる
先輩達のデータと自分たちを比較できる
精神面だけではない。チーム内で継承されているものがある。バトンパスの練習にデータを活用するという手法だ。それは日本独自の強みと言っていい。
朝原らの時代から合宿などに科学スタッフを帯同し、バトン練習の様子をビデオで撮影するようになった。今では、バトンを受け渡しできるテイクオーバーゾーンを中心とする40mの区間タイム、前走者や次走者のスピード、バトンパスの完了位置、次走者がバトンを受けるために手を上げていた時間、など多岐に渡る数値がグラフなどで選手にフィードバックされ、走りの感覚を客観的に捉える手助けをしている。
ロンドン、リオと五輪で2大会続けて1走を務めた山縣は言う。
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「先輩達のデータも残っていて、例えば、塚原さんと末續さんの区間が北京五輪前の練習では何秒だったとか。自分たちと比較できる。良いタイムが出たら自信にしていました。比較対象があると、どこが問題なのかも見えやすい。僕は『ハイ』と声を掛けて(次走者に手を上げるタイミングを知らせて)からバトンを渡すまでが長かった。代表に入るまで気にも留めてなかったんですけど」
新しいアンダーで稼いだ0秒06が効いた
チームは継続的にデータの収集と分析を行い、その結果、'14年仁川アジア大会でバトンパスの区間タイムが中国より劣っていたことを把握。これを機に、新しいアンダーハンドパスに挑戦し始めた。バトンを受ける次走者の腕の向きを、やや後方、腕振りの一番後ろあたりに持ってくる形に変えたのだ。前走者も腕を前にして渡す。アンダーの長所である「加速しやすさ」を維持しながら利得距離を稼ぐポジションだ。
リオ五輪決勝では、前走者がどこまで迫ったら次走者が動き出すか、その目安の位置を4分の1足分、約7cmの幅で微調整した。日本は日本新となる37秒60で、猛烈に追い上げてきたカナダを0秒04抑えて2位。こだわってきたバトンパスの3区間の合計で、カナダを0秒06上回ったことが最後の最後で効いた。