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【棋聖戦で先勝】藤井聡太二冠は大一番だらけ、羽生善治九段は年間89局! 中村太地七段が語る“将棋のアスリート的な体力勝負”とは
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by日本将棋連盟
posted2021/06/07 17:03
棋聖戦第1局を勝利した藤井聡太二冠
タイトル戦における「移動」もかなりの負担
これはかなり肉体的な負荷があると1人の棋士として実感しています。
実際に腰を痛めている棋士も多く、対局翌日にはマッサージを受けるというケースもよく聞きますからね。プレー中の動作で体に負荷をかけるアスリートの方とは少し違うかとは思いますが、同じ姿勢を保つ体力が試される、と言いましょうか。
普段から運動しておくことで健康な肉体を保つことも大事です。例えば渡辺名人は定期的にランニングやフットサルをしていますしね。
野球やサッカーなどのアスリートと同じく、タイトル戦における「移動」もかなりの負担となると感じます。
通常、タイトル戦は各局ごとに日本各地で開催されていきます。対局前日、そして対局翌日には新幹線もしくは飛行機での長距離の移動となります。この2日間は研究に割く時間も限られる。つまりトレーニングの時間が少なくなるわけですね。
「封じ手」で、眠れないというケースも
私自身はまだ経験がないのですが、これが2日制となると、1日目の封じ手(※対局再開時に有利・不利が極力出ないように、手番を持っている側が次の一手を紙に記入。誰にも見せないように封をする)以降もいかに過ごすかが非常に難しいようです。
翌朝の対局再開まで頭の中で盤面を描いてしまい、眠れないというケースも聞きます。
なおかつ2日制では対局前日と翌日の移動もあるため、ほぼ3泊4日の日程となる。これまではこの期間、ほかの対局について考える時間はほとんど取れませんでした。
ただここ近年は自分のPCを持ち歩いたり、リモートで自宅のPCを動かすことによって、限られた時間でも研究を進めていたりもします。
そういった創意工夫をしなければ、日々進化していく現代将棋に対応できないとも言えるのですが。