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<新名人の決意>渡辺明「敗北の夜を越えて」

posted2020/09/09 07:30

 
<新名人の決意>渡辺明「敗北の夜を越えて」<Number Web> photograph by Wataru Sato

17歳の才に屈した渡辺明は、1カ月後に悲願の名人位を獲得。藤井との再戦は遠くない未来だろう。

text by

大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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photograph by

Wataru Sato

空前の注目を集めた戦いで、「魔王」とも称される男は、17歳の才気に屈した。新たなる棋聖が幾重にもフラッシュを浴びる中、敗者はひっそりと対局場を後にした。しかし1カ月後、百戦錬磨の彼をして「縁のない棋戦なのかな」と言わしめるほどに遠かった名人位を獲得。ブームの引き立て役で終わるつもりは毛頭ない。来るべき再戦に向けて、その眼光は鋭さを増している。

 歴史的決戦の直前に、負けた時のことを考える勝負師がいるのだろうか――。

 史上最年少の17歳10カ月20日でタイトル戦初挑戦を決めた藤井聡太と対峙したのは、渡辺明三冠だった。社会現象を巻き起こした若き天才を現役最強とも称される棋士が迎え撃つ。第91期棋聖戦五番勝負には、将棋界の枠を超えた注目が集まっていた。

 第3局を終えた時点で、天才は衝撃という言葉ではとても追いつかない戦いを見せていた。

 第1局は▲1三角成、第2局は△3一銀。藤井はそれぞれの対局で、渡辺が「まったく気づかなかった」という妙手を繰り出して勝利をさらったのである。敗れれば失冠する第3局こそ渡辺は、精度の高い研究でリードを奪って逃げきるという得意の勝ち方を披露したが、崖っぷちであることに変わりはない。

 私は、7月16日に大阪の関西将棋会館で行われる第4局のレポートを専門誌から依頼されていた。将棋界は棋士と記者の距離が近い。プロの将棋は専門性が極端に高いため、対局者から解説を受けなければ内容が理解しづらい側面がある。

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藤井聡太と将棋の天才

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藤井聡太と将棋の天才

 

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