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【棋聖戦で先勝】藤井聡太二冠は大一番だらけ、羽生善治九段は年間89局! 中村太地七段が語る“将棋のアスリート的な体力勝負”とは
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by日本将棋連盟
posted2021/06/07 17:03
棋聖戦第1局を勝利した藤井聡太二冠
羽生先生は1日の間に別の早指し棋戦を2つこなした
これまでの棋士で最も年間対局数が多かったのは、2000年度の羽生善治先生の89局。それに続くのは私の師匠である米長邦雄永世棋聖の88局(1980年度)です。
これほどまでの対局数になると大みそかに対局して、その数日後には指し初めの前から対局をしていた――という話も聞いたことがあります。
羽生先生にも逸話があって、1日の間に別の早指し棋戦を2つこなしたとも。具体的に説明すると午前中、午後とそれぞれ移動を伴う棋戦に臨むという驚きのスケジュールです。
もし午前中の対局が持将棋(※双方の玉が相手陣内に入って詰む見込みがなくなった場合、それぞれの持ち駒を計算して、両者24点以上の場合引き分けとする規定)になってしまったらどうしたんだろう、とも思ったんですが(笑)、それほどまでのスケジュールをこなしていたことには、ただただ敬服するばかりです。
永瀬さんの“沼に引きずり込む”ような戦いぶり
またA級順位戦がものすごいプレーオフになった時、豊島竜王が毎日のように公式戦が存在するスケジュールになったのは語り草ですね(※第76期A級順位戦、史上最多の6人が6勝4敗で並ぶ異例のプレーオフに。当時の豊島八段は2018年3月、プレーオフと2日制の王将戦を立て続けに対局した)。
その際、豊島竜王は「休むときは意識して休む」と決めていたそうです。
私が対局して「ものすごい体力だな」と感じている棋士は……永瀬二冠ですね。永瀬二冠はとにかく“将棋の体力”がものすごい。いくら将棋のことを考えていても楽しい、といった印象を受けます。
永瀬二冠と豊島竜王が現在戦っている叡王戦がまさにその例です。
第7局を終えた時点で2つの持将棋になるなど、永瀬さんが“沼に引きずり込む”ような戦いぶりと言いましょうか。それに対して豊島竜王も敢えて永瀬二冠の意図を受けて立ち、タフな戦いを続けているという印象です。
これもまた1人の棋士として見ごたえがあります。
こういった棋士それぞれの特長を知りつつ、どんな調整をしているのか。そういった部分にも思いを馳せてもらって、対局を楽しんでもらえれば嬉しいなと思います。
(構成/茂野聡士)