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【棋聖戦で先勝】藤井聡太二冠は大一番だらけ、羽生善治九段は年間89局! 中村太地七段が語る“将棋のアスリート的な体力勝負”とは
posted2021/06/07 17:03
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by
日本将棋連盟
藤井聡太棋聖の史上最年少タイトル獲得によって注目が一躍高まっている将棋界。NumberWebでは将棋の判断力、メンタル、肉体などの“競技的”な側面に注目し、王座獲得経験のある中村太地七段に将棋の奥深さについて定期的に語ってもらう。第1回のテーマは特に今季は“過密日程”となっていることもあって、タフな戦いをこなす棋士の肉体と体力、コンディショニングについて。
◆ ◆ ◆
新型コロナウイルスの影響によって、今年度の将棋界は異例の日程となっています。
4、5月は対局がほとんど組まれなかったため、6月以降は数多くの対局をこなしています。
それによって数多くのタイトル戦が組まれ、藤井聡太棋聖の誕生などで将棋を多くの方々に注目していただいていることは、1人の棋士として非常に嬉しい限りです。
8月14、15日の名人戦第6局を制して新名人となった渡辺明名人(棋王、王将と合わせて三冠)、豊島将之竜王、永瀬拓矢二冠、藤井棋聖といったタイトル戦に臨んでいる棋士はもちろん、私を含めた棋士全体が通常よりも短い期間で公式戦の対局を行っています。
実際に日程をこなしてみると、将棋に向かう集中力を保てるという意味ではメリットもあるのかなと感じています。
実は「肉体的な体力」でも厳しい部分が
一方で、勝利を積み重ねているときは気分も前向きになりますが、負けが続くとそこから立て直していくのは難しい。また対局が続くことで次の相手の研究が深められない部分もデメリットと言えるかもしれません。
その詰まった日程の中でどのように心身の体力を保っていくのか――。
棋士として、万全のコンディションで対局に挑むことはとても重要です。対局の大事な局面で集中力を発揮できるかどうかが勝敗に直結しますからね。
皆さんは将棋という競技の特性上もあって「頭脳の体力」はどうなのか? それがすぐ思い付くかもしれませんが、実は「肉体的な体力」でも厳しい部分があります。
中継をずっと見ている方ならお気づきと思いますが、将棋棋士は朝から晩まで長時間にわたってほぼ正座の姿勢で臨みます。