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福永祐一のダービー制覇は「最悪の枠」から始まった かすれた声で語った19度目の挑戦「香港もドバイも勝ってきて、一番特別でした」 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/05/31 19:00

福永祐一のダービー制覇は「最悪の枠」から始まった かすれた声で語った19度目の挑戦「香港もドバイも勝ってきて、一番特別でした」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

福永祐一のダービー制覇は多くの人にとって「やっと」だった。本人はどう感じているのだろうか

「香港よりドバイより、ダービーが一番特別でした」

「もうこのまま勝てないんじゃないかと思ったこともありました。調教師になって勝つしかないのかなと(笑)。初めて緊張に呑み込まれる経験をしたのがキングヘイローのダービーだった。そして、騎手人生のなかで一番悔しくて、無力感を味わったのがエピファネイアのダービーだった。

 かと思えば、今、経験したことのない高揚感、充実感を味わわせてくれている。こういう経験をさせてくれる特別なレースなんだと、勝ったことでわかりました。ダービーだけは違うと聞いていたのですが、香港やアメリカ、ドバイでもGIを勝ってきて、やはり、ダービーが一番特別でした。上手く言い表せないのですが、普通、GIを勝つと喜びが先に来るんですけど、ダービーは、よくわからない違う気持ちになるんです」

「スーパールーキー」と騒がれた福永も41歳になった。通算21勝目のGIは、特別だった。

「勝ってないのはぼくだけだった(笑)」

 福永が友道厩舎の馬によく乗るようになったのは、2008年の鳴尾記念などを勝ったサクラメガワンダーの主戦として起用されるようになったころからだ。

「騎手に醍醐味を与えてくれる調教師さんです。それに応えられて、今日はよかったと思います。友道先生はマカヒキでダービーを勝っているし、金子オーナーはダービー4勝目で、ワグネリアンの父はディープインパクト、母の父はキングカメハメハだから、ダービーを勝ってないのはぼくだけだった(笑)。

 この馬は、今まで乗ってきたGIホースと違って、何で走るのかよくわからないんです。今日なんか、あのサイズ(450kg)の馬にできる競馬じゃなかった。ねじ伏せましたからね。

 マイルとかで走るようになりかねない馬に距離をもたせるのは『厩舎力』だと思います。今年が平成最後のダービーというのは意識していました。次の元号でもダービージョッキーになれるよう、精進していきます」

【次ページ】 「父が一番勝ちたかったレースはダービーでした」

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