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福永祐一が語ったダービーでの“挫折のち栄光”… エピファネイアとキングヘイローでの失敗とワグネリアン、父と周囲への感謝とは
posted2021/05/31 16:00
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Takuya Sugiyama
ついに壁を破った。誰よりも渇望し、もがき苦しみながら果敢に挑み続け、デビュー23年目、激闘の末に掴み取ったダービージョッキーという栄誉。新境地に達した41歳が、収穫の季節を迎えた己の競馬道を大いに語った。Number964号(2018年10月25日発売)の特集を全文掲載します!
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先頭でゴールラインを切った時、天にも昇る気持ちって、こういうことなのかと思いました。ウイニングランでは気持ちも体もフワフワして、漫画の主人公のような感情の昂ぶりに、自分でも戸惑うほどだったんです。
もちろん、人生で今まで味わったことのなかったもの。スタンドからのすべての声援が一身に注がれているのも最高だったんですが、それを抜きにしても、体が感動の渦の中に入ったようでしたね。
僕はスポーツが好きで、どちらかというと、することよりも見るほうが好き。見て感動するのって映画でもありますけど、圧倒的にスポーツのほうが多い。ですから、スポーツの存在意義って大きいなってずっと思ってたんです。
でも初めてでしたね。自分が成し遂げたことで、こんなに感動できたのは。
それは家に帰ってもしばらく続き、何日間もずっと感動した状態でした。あとでインタビューを見返しても、とても高揚している自分がいるんです。ああいう自分を見たのも初めてで、新鮮でした。両親には実家に帰って報告しました。その時だけはちょっと違って、照れくさくもあるので、つとめて普通にいきましたけど。
皐月賞で犯した過ち。
平成最後のダービージョッキーに輝いた福永祐一騎手。ワグネリアンを駆り、逃げた皐月賞馬エポカドーロを好位から差し切った。'96年のデビューから19回目の挑戦にして手に入れた待望の初タイトル。そして迎えた秋競馬開幕、ダービー制覇にまつわる秘話が、情熱を伴って一気に噴出した。感動は彼の中で冷静に整理されながらも、うねりとして続いていたのだ。
ワグネリアンが頭ひとつ抜けている――。皐月賞のメンバーを見回して、そう過信したのが何よりの過ちでした。
4戦全勝のダノンプレミアムが回避して、エポカドーロにしても、僕が乗って未勝利戦(1月21日、京都芝1600m)を勝った馬。皐月賞はどんな展開になっても、まあ、負けないだろう、と。