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米投資ファンドがオールブラックスに触手…世界のラグビーに今、何が起きているのか【日本の新リーグも対象になる?】
posted2021/05/30 17:01
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph by
Getty Images
世界のラグビーファンたちがグラウンド上の熱戦に目を奪われるなか、その外では大きな「お金の動き」が起こっている。
ニュージーランドラグビー協会が、アメリカの投資ファンド「シルバーレイク」に協会の収入権の12.5%を売却する方向で調整を進めているという。売却金額は3億8750万ニュージーランドドル(約303億円)。協会によれば、この資金は国内のアマチュアクラブ、プロクラブ、代表の運営と強化に使われ、代表選手の欧州や日本への過剰な流出を防ぐための有効な手段になるとのことだ。
設立以来、120年近くもの間、独立組織として代表(オールブラックス)の強化、そして国技であるラグビーの国内運営を統括してきた協会が、ある意味、身売りを決断したことになる。このニュースは世界のラグビー界に大きな衝撃を与えた。
もちろん、パンデミックと代表戦の中止による収入減が、その背景の1つとしてある。協会は傘下の収入の受け皿となる組織をニュージーランド証券取引所に上場するという手も検討したようだが、シルバーレイクの投資を受け入れるオプションを選択した。
選手からは懸念の声も
トップクラブと代表で選手の取り合いが起こらないどころか、子どものラグビースクールから全てのアマチュアクラブまでもが、代表の勝利を最大の目的として運営されているニュージーランドのラグビー界。世界的なブランドであるオールブラックスの関連収入で、国内のプロクラブから草の根ラグビーにまでもその収入を還元するというビジネスモデルで運営されている。
テストマッチの中止により傾いたラグビー財政を立て直すため、国外の投資ファンドの資金に頼るのは、やむを得ない決断だと見ることができるかもしれない。
この動きに対し、選手たちは「過剰な商業主義」に対する懸念の声を発した。
選手会の合意が得られなければ、協会の幹部が何を言ったところで、この投資案は破談に終わる。現在の協会のポジションは「選手たちと話し合いながら解決策を見つける」ことだが、果たしてどのような解決策になるのだろうか。