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「将棋の強い“天才少女”が九州にいる――」林葉直子、里見香奈、西山朋佳…“初の女性棋士”はいつ誕生するか<60年の物語>
text by
相崎修司Shuji Sagasaki
photograph byJIJI PRESS
posted2021/05/10 17:01
1983年2月、中学3年の林葉直子さん。当時、史上最年少の女流名人になり王将位と二冠に
また当時、王将のタイトルを持っていた大山康晴十五世名人と飛香落ちを指し、勝ったことも将棋雑誌では大きく扱われていた。
上手が時のタイトルホルダーとはいえ、飛香落ちで互角と見られていたのでは、当時の女流棋士の実力がまだそれほどでもないと判断されていた一つの証拠だろう。事実、1981年から公式戦に女流棋士の参加枠が作られたが、女流棋士が初勝利を収めるまでの道程は遠かった。
28年前、男性棋士を初めて破った日
その悲願を成し遂げたのが中井広恵女流六段である。中井は3人目の女性奨励会員で、2級まで昇ったが、1990年に退会した。だがその後も女流棋戦では林葉さん、清水市代女流七段と並ぶ3強時代を形成している。そして1993年の竜王戦で男性棋士を破り、ついに歴史を動かした。
林葉さんが将棋界を去った後も、中井と清水の2名が長らく2強時代を築いていた。2強の突出度合いは1993年の女流名人戦から2007年の倉敷藤花戦までの全ての女流タイトル戦(60期)で、両者のいずれかが登場していたことからもわかる。
そして中井以降も何名かの女性奨励会員はいたが、いずれも初段に至らず退会している。6連勝あるいは9勝3敗で上がれる級と異なり、1級から初段に上がるには8連勝あるいは12勝4敗の成績が必要なので、初段は奨励会における一つの壁なのだ。
里見香奈が初の三段リーグ入り
その壁を打ち破ったのが里見香奈である。2011年に当時女流三冠だった里見は奨励会への編入試験を受験し、1級で合格。以降は奨励会員と女流棋士の二足のわらじを履くことになる。そして2012年に初段へ昇段した。現行規定における女性の奨励会初段は里見が史上初である。そして2013年に二段、さらには三段へ昇段を果たした。いずれも女性としては史上初で、四段を目指す三段リーグには、2014年4月から始まる第55回から参加が予定されていた。