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「将棋の強い“天才少女”が九州にいる――」林葉直子、里見香奈、西山朋佳…“初の女性棋士”はいつ誕生するか<60年の物語> 

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相崎修司

相崎修司Shuji Sagasaki

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photograph byJIJI PRESS

posted2021/05/10 17:01

「将棋の強い“天才少女”が九州にいる――」林葉直子、里見香奈、西山朋佳…“初の女性棋士”はいつ誕生するか<60年の物語><Number Web> photograph by JIJI PRESS

1983年2月、中学3年の林葉直子さん。当時、史上最年少の女流名人になり王将位と二冠に

 だが2014年の2月、体調不良による休場届が里見から日本将棋連盟に提出される。里見の三段リーグ初参加は2015年10月に始まる第58回まで持ち越しとなった。年齢制限の26歳まであと3年と迫ったこともあり、リーグ3回の休場は大きかった。

 結果として里見は2018年の第62回三段リーグを最後に、奨励会を退会する。だがそれ以降も女流棋界の第一人者としてあり続けており、2019年には新設の清麗戦を制して、史上初の女流六冠となった。

 また女流棋士として参加する男性棋戦でも好成績を上げている。それまでは男性棋戦における女流棋士の勝率はよくて2割ほどだったが、里見は2018年度に7勝8敗、19年度は12勝12敗、20年度は6勝7敗と、ほぼ五分の成績を残している。また18年度は女流棋士の対男性棋士成績が16勝20敗だったので、里見に刺激を受けた他の女流棋士の実力も向上したと言える。

男性棋戦で「5勝3敗、12勝9敗」の西山朋佳

 里見に続き、史上2人目の女性三段となったのが西山朋佳である。2015年に三段へ昇段し、16年4月からの第59回三段リーグに初参加。初参加のリーグでは10勝8敗と勝ち越したが、女性が三段リーグを勝ち越したのはこの時の西山が初めてである。さらに2020年の第66回三段リーグでは14勝4敗の好成績で次点を獲得。順位差で四段昇段はならなかったが、女性の次点獲得も無論西山が初だ。

 また西山の活躍で特筆すべきものは竜王戦ランキング戦での戦いだ。19年度の第33期で6組のベスト4、20年度で同じくベスト8まで勝ち進んでいる。竜王戦を含め、全ての男性棋戦で19年度に5勝3敗、20年度は12勝9敗という成績を残している。20年度の12勝9敗は竜王6組ランキング戦決勝で西山と当たる可能性もあった折田翔吾四段が残した成績と同一だ。

 以上の成績を考えれば、少なくとも里見と西山の2強は男性棋士と五分に戦えることは証明されている。西山も先日に奨励会退会から女流棋士への転向を表明し、残念ながら三段リーグ突破はならなかったが、プロ編入試験を経て四段の可能性は十分あると言える。こればかりは実際に試験の受験資格を得る段階にならないと、両者が受験するかはわからないが、かつての蛸島や中井、あるいは自身がそうであったように、新たなるパイオニアとしての道を切り開いて欲しい。

 また、現在の三段リーグではただ一人の女性として中七海三段が奮闘している。彼女の頑張りにも期待すると同時に、先達の活躍を見てプロを志す女性が増えることにもつながればと思う。

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