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“将棋めし”の元祖、鳥取砂丘以外でも全裸、長嶋茂雄と大の仲良し… “49歳で最年長名人獲得”の米長邦雄伝説が濃すぎる
posted2021/05/04 11:02
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Noboru Tamaru
近年のタイトル戦や人気棋士の対局では、昼食の「勝負めし」と「おやつ」が注目されている。テレビやネットですぐに報じられると、食事を出前した店に客が殺到したり、菓子店の商品が売り切れになることもある。
米長は、対局中の食事やおやつにこだわった走りの棋士だった。新聞の観戦記や雑誌の記事から、いくつか紹介する。
《「ベリーレアのビフテキを二百五十グラム。それに茹でたジャガイモとニンジン。ベリーレアという点を間違わないように」と米長》
《米長は、ご当地のうまいものを注文する。函館ならイカソーメン、岐阜ならアユ、札幌ならバターをいっぱいつけたジャガイモ》
《「地中海風ブイヤベースにライスはいりません」と米長》
《米長が昼食に注文したのは三個のアンパン。実際に食べたのは一個》
米長はある重要な対局で、さすがに緊張して食欲がなかった。
《米長はミカンをむんずとつかみ、二つに割ってぱくっと食べた。わざとオランウータンのような食べ方をする。本人は「アラン・ドロン」を自称しているが、別名「オランウータン」の呼称理由がここにある》
《「リンゴをください。皮をむいて真っ二つに割り、芯を取って五ミリの厚さに切って」と米長》
《「イチゴで作ったまんじゅうをください」と米長。中原はそれは何かという表情。ホテル側は「あ、イチゴ大福です」。ホテルに先乗りした米長は、事前に調べておいてさりげなく注文した》
《「八時に紅茶、九時にコーヒーをください」と米長》
長時間の対局の夜戦では、集中力を保つためにカフェイン飲料が必要のようだ。
悲願の名人位獲得、その時の勝負飯は?
米長は、一九九三(平成五)年の名人戦で中原名人を四連勝で破り、悲願の名人位を最年長記録の四十九歳で獲得した。
その名人戦では、第一局(栃木県宇都宮市)で逆転勝ちしたのが大きかった。米長の二日目(一日目は不明)の「勝負めし」は、昼食は松花堂弁当、夕食はご当地名物のギョーザとけんちん汁。名人を獲得した第四局(広島県尾道市)では、一日目の昼食は、ミックスサンド、ホットミルク、野菜サラダ。二日目の昼食はヒレステーキ。夕食の注文は断った。戦いがすでに山場を迎えていたからだ。そして、夕食休憩前の十七時二十分に終局した。