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東京五輪金メダルへ、スペインサッカーが直面する“選手貸し出し問題” スター選手が揃う確率は極めて低い?
posted2021/05/03 11:01
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Getty Images
3月末、スペイン女子ハンドボールの東京五輪参加が決まり、大会に出場するスペインの団体競技は前回のリオ五輪と並ぶ9となった。男女ハンドボール、男女バスケ、男女ホッケー、男女水球、そして男子サッカーで、いずれもメダル獲得の期待が高まっている。9競技というのは欧州ではフランス、ロシアの6、英国、オランダの5を大きく上回り、夏を控えたスペインには欧州のスポーツ大国としての自我さえ芽生えつつある。
国際レベルでスペインが“大国”となったのは実はここ最近のことだ。最も人気があり、世界最高峰のリーグを持つサッカーですら、ドイツやイタリアと並ぶ欧州の強豪として自信を持ったのは、'08年のユーロ優勝以降だろう。五輪においては自国開催の'92年バルセロナ五輪で流れが変わった。それまで団体競技の参加数は'80年モスクワ五輪の5が最高だったが、バルセロナ五輪には11チームを送り込み、男子サッカーと女子ホッケーで金メダルを獲得。その後も順調に出場競技数を伸ばしている。
選手名だけ見れば十分にメダルを狙えるが
今夏、最も期待を集めるのはやはりサッカーだ。ダニ・オルモとオジャルサバル、ファビアンらはすでにA代表でも主力。共に18歳のアンス・ファティやぺドリのバルサコンビも台頭し、OA枠ではセルヒオ・ラモスも出場へ意欲を見せている。選手名だけ見れば十分にメダルを狙えるポテンシャルはあり、だからこそ国民も盛り上がっているわけだが、現実的には彼らスター選手がすべて揃う可能性は極めて低い。
焦点はクラブから五輪に向けた選手貸し出しの許可を取れるかどうか。ドイツ、フランスも直面している五輪サッカーの難しさだ。6月には1年延期されたユーロ2020が控えている。サッカー界における価値やプライオリティは圧倒的にユーロが上。そして同大会に出場した選手は所属クラブが五輪参加を認めない可能性が高い。仮にユーロで決勝まで進んだとすれば7月11日まで拘束され、五輪男子サッカーの開幕はその10日後だ。新シーズンへむけた合宿も始まっている時期で、気前よく選手を差し出してくれるクラブは少ないだろう。スペインサッカーが東京でメダルを獲れるかは、ピッチ内ではなく、ピッチ外での交渉力や政治力にかかっている。