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松山英樹、“10度目”のマスターズは「ピースがぜんぶハマれば」…17年夏から遠ざかるPGAツアー優勝、追い求める“理想のカタチ”とは
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2021/04/08 06:00
オーガスタに乗り込む前、多くのボールを打ち込んだという松山英樹。2011年のローアマ獲得から10年、20代最後のマスターズへ挑む
「試合期間中、こんなに練習する選手を見たことがありません」
2月に合流した目澤秀憲コーチは他に指導する河本結、有村智恵らの研究熱心ぶりも認めながら、そう言った。
だが、それは彼らにとっては必ずしも誉め言葉ではない。練習という手段が目的化しないのが松山でもある。世間が、なにより自分自身が求めているのは好結果に他ならない。
マスターズを数日後に控え、松山は少し疲れた表情で話し出した。
「一日、一日で『よし、できた』というのと、『ダメだあ』というのが極端で。『0点か、80点か』と変わる日が続いている。80点から0点になると、マイナス50点くらいになったように感じて気持ちが落ち込む。その繰り返し。だんだん……傾向みたいなものは見つけられているから、ピースがぜんぶハマれば……って感じなんですけどね。なかなかハマらない」
打席に2種類の計測機を置いて、数値化されたショットそのもの、スイング、クラブの軌道など、ポイントを絞って確認していく。目澤コーチの仕事は目下、松山が持つ、言葉では表現しづらい「感覚」を、分析結果や理論で裏付けしながら検証すること、理想のカタチへの方向付けをすることにありそうだ。
練習場で傍から見れば良いショットが出たようで、本人は大きくため息をついている。また、その逆もある。簡単に解決しそうなチューニングではない。
「(目指すスイングが)『できない』とは思わない。今までやってきたことと繋がっている部分もあるし、まったく新しいこともある。そこで(試合では)なかなか思うようなプレーができていない。もちろん良いときはあるけれど、回数を増やさないと、安定しないと勝てない」
内容と結果が伴うときを待つ日々は長く、少々ツライ。