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松山英樹、“10度目”のマスターズは「ピースがぜんぶハマれば」…17年夏から遠ざかるPGAツアー優勝、追い求める“理想のカタチ”とは
posted2021/04/08 06:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
決勝ラウンド進出を逃した小平智は、悔しさを抱えて練習場に向かった。
時刻は午後6時を回った頃。広大なドライビングレンジに選手は他に2人しかいなかった。
打ち込みの最中、「おつかれさまです」と声がかかった。振り返った先にいたのは松山英樹のバッグを担ぐ早藤将太キャディ。練習用のボールを補充しに来たところだった。
マスターズを翌週に控えたバレロテキサスオープン、2日目のことである。
実はこの日、松山は朝のうちにスタートして午後1時にはプレーを終えていた。昼食をスナックで済ませ、1時間ほど仮眠を取ってからずっと練習していたという。
同試合の試合会場となったTPCサンアントニオには期間中、出場する選手関係者が多く宿泊するホテルが併設されている。マスターズを見据え、この大会に初めて出た松山は「最高の練習環境? いや、良くない。やりすぎちゃう」と“警戒”もしていたのだが、ホントに球を打ちまくった。3月に始まったサマータイムの恩恵にもあずかり連日、日没間際の午後8時前まで……。
その前の週(マスターズの2週前)、同じテキサスで行われたWGCデルテクノロジーズマッチプレーで松山は週末の決勝トーナメントに残れなかった。だがその土曜日もコースに姿を見せ、試合に出る選手たちからは離れた打席で練習、練習。パッティンググリーンはひとり占め。黙々とボールを転がした。
今年でマスターズは10回目
大学2年生で初出場し、ローアマチュアを獲得した2011年大会から今年でちょうど10回目の出場となるマスターズ。2月に29歳になり、20代として迎える最後のマスターズ。その直前の様子は、とても「調整」と呼べるものではなかった。
2017年8月にPGAツアー5勝目を挙げてから、手が届かないタイトル。松山は今、6勝目はもちろん、その先を見て課題に取り組んでいる。
今年キャリアで初めてコーチと契約した。重要課題であるパッティングへのアドバイスも受けながら、ショットでスイング改良を本格化させた。ドライバーショットではかねて目指してきたドローボールの習得がターゲット。もちろん今までもドローは打てたのだが、彼自身が“理想とする軌道”を追い求めている。