炎の一筆入魂BACK NUMBER
佐々岡カープの勝負手が今季は早そう… 開幕戦の大瀬良降板→逆転負けを教訓に、期待したい“若き中継ぎ陣”の台頭
text by
前原淳Jun Maehara
photograph bySankei Shimbun
posted2021/04/02 06:00
開幕戦は8回に逆転されたものの、次戦から“9回打ち切り”に対応した戦い方に変えてきたカープ
問うべきは松山ではなく、守備固めのタイミング
打球の質としても状況的にも、ミスをするような場面ではなかった。そして二塁走者が生還したこと以上に、打者走者を二塁まで進めたことが痛かった。このワンプレーがエースをイニングの途中で降板させ、逆転負けにつながる一因となった。
松山の守備力を問うつもりはない。首脳陣は守備力には目を瞑り、打力を期待して先発起用している。多少のミスは覚悟の上だろう。
ただ、あの場面は開幕戦、エースが登板して勝ちに行った試合である。しかも4点のリードを持って終盤に突入していた。今季は延長戦がない。松山は5回裏の打席が終わった時点で、この試合で回ってくるのは残り1打席程度だった。守備のリスクを上回るメリットが、はたしてその1打席にあったのだろうか。
「6回に守備固めは早い」
いつものシーズンならそう感じるかもしれない。しかし大瀬良が好投し、すでに勝ちパターンを投入できる展開になったことを踏まえれば、6回表からの守備固めも、今季の状況的には早すぎることはないのかもしれない。
9回打ち切りルールをどこまで味方にできるか
今季のペナントレースは、9回打ち切りのルールを味方にしたチームが浮上すると感じられる。9回打ち切りでも、一軍登録枠は31人、ベンチ入り枠は26人のまま。用兵も今季の大きなポイントとなるだろう。
開幕戦を逆転で敗れ、いつもとは違うシーズンと感じられたのか。教訓をすぐに生かしていたのも確かである。次戦では一塁のクロンを6回でベンチに下げ、逃げ切り態勢を整えた。引き分けた開幕3戦目も、ベンチ入り野手を1人残す積極交代で引き分けに持ち込んでいる。2戦目以降の姿こそ、21年仕様の戦い方のようにみえた。
リーグ連覇中の巨人も、開幕3戦目は1点ビハインドの6回に無死二塁から代走の切り札・増田大輝を投入するなど、今季は勝負手が早くなっている。
昨季は何度も終盤で追いつかれるなど、佐々岡真司監督には苦い記憶が残っている。
「ベンチ枠をすべて使わないといけないわけではないけど、早めの起用にはなることもある」と今季仕様の戦い方を頭に入れつつも、「ただ中盤からガラッと変えることはできない。追いつかれたときのことも想定して残しておく駒も取っておかないと」とリスクをおかさない慎重な考えも残す。
この9回打ち切りの中で鍵を握るのは、安定した「中継ぎ力」だ。