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競馬ファンも意外と知らない東京競馬場にいる“二足歩行の白馬”って? 25年目職員とのコンビはまるで親子

posted2021/03/19 17:00

 
競馬ファンも意外と知らない東京競馬場にいる“二足歩行の白馬”って? 25年目職員とのコンビはまるで親子<Number Web> photograph by Yusuke Nakanishi

ホワイトワンボーイと“呼吸”を合わせて演じる富塚剛氏。迫力あるレースとはまた違った馬の魅力を味わえる

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中西祐介

中西祐介Yusuke Nakanishi

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Yusuke Nakanishi

 中央競馬史上多くの名勝負の舞台となった東京都府中市にある東京競馬場。数々のGIレースなどがテレビ中継やニュースに取り上げられるためこの場所を知っている方は多いだろう。

 この場所に「アトラクションホースショー」を行う人馬がいることをどのくらいの方がご存知だろうか。東京競馬場の敷地内にある乗馬センターにはロングレーン、アンダルシアンホースダンス、ファンタジックホースショー、トリックホース、軽乗(けいじょう)といった各演目を行う人馬が、自らの出番を待ちながら日々鍛錬を積んでいる。

 アトラクションホースとはレースや競技に出場するのではなく、馬事振興の目的で「演技」を披露する人馬だ。コロナ禍になる以前は全国の競馬場に出向いたり、東京競馬場の乗馬センターでは体験乗馬とともに演技を披露、そして世田谷区及び競馬場近くの小学校へ人馬で訪問するなど様々な活動をしてきた。

 それらは馬という存在をより身近に感じてもらうためである。休日の東京競馬場では乗馬センター横の公園になっている敷地から演技を見て喜ぶ親子も多く、勝負に徹する迫力ある競馬とは違った角度から「馬という存在」の魅力を届けてくれる。ジョッキーや馬術選手からはこのような場所で子供の頃に馬との接点があったことがきっかけで馬に乗りたい、触れたいと思ったという声を聞く。

この道、25年の大ベテラン

 その部隊の中にアトラクションホースとともに25年という年月を過ごしてきた職員がいる。馬のお辞儀や後ろ肢での二足歩行などの演技を披露するトリックホースという演目を担当する富塚剛、49歳だ。

 平成2年にJRAに入会した富塚はアトラクションホースを担当して25年になるベテラン職員。現在JRA職員の中で最も長い時間をアトラクションホースとともに過ごしている。

 彼がアトラクションホースの部門にやってきたのは平成7年。当時は東京都世田谷区のJRA馬事公苑がアトラクションホースの活動拠点だった。長らくアトラクションホースを担当していた職員が定年を迎えるにあたり後継者を探していたところで声をかけられて快諾。入会後育成牧場に勤務していた富塚は馬事公苑に異動し、師匠の下で技術を身につける為の毎日が始まった。

 最初に行っていた演目はロングレーンと軽乗。「当時は教えてもらうのではなく師匠の技を見て技術を盗む時代だった」と笑いながら話す。馬に自然な演技をしてもらうためには人に技術がなくてはならない。そのためには多くの時間を馬と共有し、信頼関係を築いていくことから始まる。お互いが信じ合えていなければ観客を魅了する演技はできないのだ。

 その後、平成10年から新たな技術を学ぶために1年間アメリカ研修に行き、帰国後は新たにトリックホースの演目を担当している。

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